【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

 夜は一人になり、虫の音色を聞きながら、本を開く。

 ランプの灯りを頼りに、読書をする時間。
 虫よけで窓辺に飾った薬草が、すっきりとした清涼感のある香りを漂わせている。この香りは集中力や記憶力を高める効果もあると言われている。今後、改良を加えてポプリとして売り出すことも可能かも。

「……あまり書かれていないのね」

 小さくため息をつき、読んでいた本をテーブルに置いた。ズシッとして重たい医学書は専門用語ばかりで、読んでいるだけで頭を使うので疲れる。だが、知らない知識を詰め込むことは嫌いじゃない。

『お姉さまって本しか友達がいないのね』

 活字が嫌いなレオナに何度嫌みを言われたことか。夜、自室でランプを灯して読書していた時も、いきなり部屋に突撃してきた時もあったっけ。

『ランプの油がもったいないじゃない。いい加減に寝たら?』

 などと言い、細かいことからよく嫌がらせされた。
 本当、当時の生活を思い出すと、今の暮らしは天国だわ。

 だからこそ、知っておきたい。私の病についてだ。
 ここにきて、半年が過ぎた。余命は一年と言われたので、半分を切った頃だろうか。
 医師はクラッド病に治療薬はないと言っていた。

 でも、どうにかすれば寿命を延ばすことができるのだろうか? 自分で作った癒しのしずくは試供も兼ねて毎日飲んでいる。自分に治癒の魔力をかけるのは可能なのだろうか。

 私が最近ずっと調べていたのは、自分の病気のこと。

 畑仕事も苦にならないし、癒しのしずく作りだって、最近では上手にできるようになった。療養施設の皆とも仲良くなったし、彼らが元気になるまで見届けたい。

 それにテオドールは本当の姉のように慕ってくれているし、ベアトリーチェ様とも仲良くなれそうだ。

 それにアレクは――。

 なんだかんだ、私には良くしてくれるし、助かっている。

 王族の人たちとここまで親しみのある関係を築けるとは思わなかった。だけど気さくな方たちで、一緒にいると本当に楽しいし心地良い。

 そう、私は欲が出てきてしまったのだ。――もっと生きたいって。

 自分の病気について調べ、治療方法を探したいと思ってしまった。
 最初は好き勝手に一年過ごすと意気込んでいた。余命宣告されてからは死んだも同然と思い、怖いものなんてないと、すべての我慢を止めた。

 でも、ここに来て、この生活があまりにも楽しくて、毎日があっという間に過ぎる。
 まだまだやりたいことはたくさんある。
 魔力だって生かしたいし、困っている人たちを助けたい。
 私は手を前に出すと、ギュッと握りしめた。
 前は心臓が痛むことが多々あったが、最近ではそれもない。

 むしろ、私の症状は悪化しているの?
 いきなり倒れて帰らぬ人になったら、どうしよう?

 今が幸せだと不安になってくる。
 ここに来た最初は、そんなこと、考えもしなかったのに。