【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

「リディアお姉さまはテオドールのものじゃないぞ」
「そうよ、アレク。言っておやりなさい!」

 けしかけるベアトリーチェ様に苦笑する。

「リディアはお兄さまのものだ」

 え? 

 ソファに座る私の前に来て、私の腕をつかむとその場で立たせた。

 そしてギュッと抱きしめた。

 えっ、えっ、えええええ……!

 突然だったので思考が停止する。アレクはゆっくりと体を離すと静かに微笑む。
 ちょっと心臓がドキドキしていまい、落ち着かない。

「あっ、そうだわ!」

 私は大げさに思えるほど、両手を叩いた。

「今日は隣のおかみさんと野菜を交換する約束をしているの! 準備しなきゃいけないから、先に失礼します」

 急いで帰ろうとするとアレクがスッと手を差し出す。

「では送って行こう」

 本当は一人でゆっくり帰って、頬の火照りを冷ましたい。

「じゃあ、リディアお姉さま、また来てね! 絶対だよ!!」

 テオドールは小指を差し出し、約束を交わす。

「これ、持っていきなさい!!」

 ベアトリーチェ様から高級そうな美容液やハンドクリームを、たくさん持たされた。

「いい? 必ず毎晩ケアしてから寝るのよ?」
「は、はい、なるべく頑張ります」

 毎日なんて続けられる気がしないが、なんとか頑張ってみると告げた。

「なるべくですって? そんなこと言うなら、抜き打ちであなたの家を訪ねるわよ!!」
「毎晩欠かさず頑張ります!!」

 ベアトリーチェ様が夜に訪ねて来るのは心臓に悪い。そうならないためにも毎晩忘れないようにしないと!

 そうしてベアトリーチェ様とテオドールに見送られつつ、帰路についた。

「騒がしくてすまないな」

 馬車に向かい合わせて座ると腕を組んだアレクが、申し訳なさそうな声を出す。

「いえ、そんなことないわ」

 私はふわりと微笑むが、これは本心だった。

「二人とも、とっても私に良くしてくれるから、むしろ嬉しい。私に優しくしてくれるのも、アレクのことが大好きだからよね」

 仲良しの兄弟の恋人だと思っているからこそ、心を許してくれているのだろう。
 そう思うと余命を黙っていることが、罪悪感でちょっぴり苦しくなるけど。

「それに私、にぎやかなのに憧れていたから、楽しいわ」

 部屋に籠って本を読んでいる時間も好き。魔法陣を描いて、癒しのしずくに魔力を注入する時間も大事。一人で過ごす時間も大切だけど、たまにはにぎやかなのもいいものだ。

「そう言ってもらえると助かる」

 アレクは安心したように微笑んだ。