【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

 アレクはベアトリーチェ様から私を引き離すと、背後から抱きしめた。

「リディア、今日も来てくれたのか」

 耳元で聞こえる低音ボイスに背中がゾクゾクする。

「あなたに恋人ができた、ってテオドールから手紙をもらったわ。自分の口から姉である私に、紹介しなさい」

 ベアトリーチェ様は手にしていた扇子をアレクにビシッと突き付けた。

「ああ、リディア・ノクティスだ」

 アレクの紹介と同時に深く頭を下げた。

「ふ~ん」

 ジロジロと私を真正面から見つめ、なにかを言いたげなベアトリーチェ様。緊張して心拍数が上がる。

「姉上、それぐらいで。リディアがすくみあがってしまうので」

 アレクはサッと私の前に立つ。ベアトリーチェ様はアレクの小言も面倒だと言わんばかりに、髪をかき上げた。

「別に取って食いやしないわよ」

 フンッと顔を背けたベアトリーチェ様は、チラリと私に視線を投げる。

「私も、しばらくここに滞在するわ」

 アレクの頬がピクリと動いたのを、彼女は目ざとく気付いた。

「あら、なにか問題でも?」

 探るような眼差しを向けるベアトリーチェ様に、アレクは小さく息を吐き出した。

「いえ、お手柔らかにお願いします」
「私が意地悪をするとでも思って? 心外だわ」
「まさか、姉上にかぎってそれはないでしょう」

 アレクとベアトリーチェ様は顔を合わせて笑い出したが、お互い目の奥は笑っていない。な、なんだか怖いわ。

「じゃあ、後でゆっくり話しましょうね、リディア」

 名前を呼ばれ、驚いて肩を揺らす。

「は、はい。楽しみにしています」

 緊張しつつも返答すると、ベアトリーチェ様はふわりと微笑む。浮かべる笑みは女神かと思うほど美しかった。
 扉が静かに閉まると、テオドールがホッとした声を出す。

「良かった。ベアトリーチェ姉さま、リディアお姉さまのこと、気に入ったみたいだ」

 それを聞いたアレクは嬉しそうに笑っている。でも、どこでそう思ったのだろう。
 首を傾げる私の頭を、アレクは軽くなでた。

「ああ見えて優しい方だ、心配ない。……多分」

 多分ってどういう意味!?

 最期をとても疑問に思った。