【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

 嵐がやってきたのは、それから五日後だった。

「あ、リディアお姉さま」

 いつものようにテオドールの部屋を訪ねると、彼はソファに座り紅茶を飲んでいた。

 その時、テオドールの対面に座っていた人物が振り向いた。

 腰まで流れる金の髪はゆるやかに巻かれ、まるで宝石のように輝いていた。深い青色の瞳は大きく、空を連想させる。唇に引かれた真紅の口紅が、彼女の美しさをより一層、引き立てていた。
 ドレスは濃紺のベルベット地で、胸元には繊細なレースがあしらわれている。首元と耳飾りには大粒の宝石が輝いていた。

「…………」

 私を視界に入れると、手にしていた扇子をパシッとしまった。繊細な細工が施された扇子は、まるで彼女の威厳を象徴する装飾品のようだった。

 無言でソファから立ち上がると、私の前に立つ。女性にしては背が高く、すらりとした体躯に、自然と見上げる形になる。その一歩一歩が、堂々としていた。

 間違いない、この迫力ある女性はアレクとテオドールのお姉さまのベアトリーチェ様だ。

 テオドールに会いに来たのだろう。

「第一王女様にご挨拶申し上げます」
「ああ、堅苦しい挨拶はいらないわ」

 名乗ろうとするが、面倒くさそうに手を横に振る。
 私をじっと見下ろす姿勢は、見定めているようだ。

「ちょっとあなた、これはなに?」

 ベアトリーチェ様が指さしたのは、ほんのりと赤くなった私の肌。

「ああ、これは昨日、外で畑仕事していたら、日に焼けてしまったみたいです」

 薬草で作った化粧水でほてりを冷まそうと思っていたが、忙しくて忘れていた。

「まああ、日焼けですって、信じられない!!」

 ベアトリーチェ様は両手で私の顔をグッとつかみ、上を向かせる。

「ほら、ここも! 赤くなっているじゃない!」
「あっ、これは……夜更かししたら、吹き出物ができてしまって」

 テオドールが貸してくれた薬草図鑑が面白いから悪いんだ。

「信じられない、寝不足は美容の大敵よ!!」

 ベアトリーチェ様が叫ぶと同時に、静かに扉が開く。

「廊下にまで姉上の声が響いています。――それぐらいにしてください」