【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

「えっ、本当に!?」

 翌日、テオドールには真っ先に報告した。私たちが付き合っていると……。

 目を輝かせて私とアレクの顔を交互に見つめるが、少し心苦しい。

「そうだ、先日リディアへ想いを告白したら、気持ちを受け取ってくれたんだ」

 まあ、よくそんなにとっさに嘘がつけるわねと、感心してしまう。

「そうなの、リディア?」

 私の顔をジッと見つめるテオドールの眼差しがまぶしい。

「えっ、ええ。そうよ。私も同じ気持ちだったから嬉しいわ」

 テオドールは満面の笑みを浮かべる。

「すごく嬉しい! 僕、リディアみたいなお姉さまがすごく欲しかったんだ」
「姉なら一人いるだろう」

 確かアレクの上に第一王女様がいたはずだ。彼より一つ年上だったはず。
 冷静なアレクのツッコミにテオドールは言葉を濁した。

「だってベアトリーチェ姉さま、時々怖いんだもの! 僕はリディアみたいに優しいお姉さまが欲しかったんだ!」
「そ、それでなんだけどー―」

 コホンと咳払いして姿勢を正す。

「まさか第二王子殿下とは知らなくて、色々失礼な態度で――」

 本来なら不敬にあたるほど気安く接していた。普段から名前を呼んでいたし。

「ううん、いいんだ。かしこまった態度が嫌だって、僕が望んだことだし。普通にしてくれて嬉しかったから」

 テオドールはにっこりと微笑み、今までどおり接して欲しいと言った。

「これからもずっとよろしくね、リディアお姉さま」

 その呼び方は気が早いんじゃないかしら? 
 だが、懐かれて悪い気はしない。むしろ嬉しい。

「私もテオドールみたいな、かわいい弟がいたら嬉しいと、ずっと思っていたの」

 頼れる姉や兄、かわいい弟、そんな家族に憧れを抱いたこともあった。

 だが、現実にいるのは意地悪な妹。

 ため息をつきたくなる日々から離れたら、こんなにかわいいテオドールと知り合えた。
 テオドールの体調はゆっくりだが回復傾向だ。
 あとは体力をつけたら、完璧だろう。

 なるべくテオドールをこの別荘地に留めておきたい、というのがアレクの考えだった。今すぐ王都に戻れば、テオドールが解呪されたことを知った人物が、またなにかしかけてくるかもしれないからだ。弱っている体に呪いは効きやすい。だからこそ、この地で完璧に健康を取り戻してから、王都に戻るという話だった。

 そんなことまで私に話してしまっていいのかしら? 疑問に思ったが、顔に出ていたのだろう。
 アレクは私の頭にポンと手を置いた。

「テオドールの呪いを解いてくれたのだから、知る権利はあるだろう」

 彼が私を認めてくれたようで嬉しかった。

「――俺の恋人なのだし」

 続いた言葉に頬が赤くなった。その様子を見てアレクは声を出して笑った。完全にからかわれている。

「リディアお姉さま。この件、ベアトリーチェお姉さまにもお手紙書いてもいい?」

 テオドールは第一王女さまにも報告したい、と言った。
 えっ、そんな噂になるのも困ると思う。
 意見を求めようとチラッとアレクを見ると、涼しい顔をしている。特に問題はないということだろうか。

「ええ、いいわよ」
「やったね」

 無邪気に笑うテオドールは私の腕に絡みついた。

 軽く返事をしたつもりだったが、まさかあんなことになるとは、この時の私は予想もしていなかった。