【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

 私はアレク様にチラリと視線を投げる。彼はなぜか上機嫌になり、楽しそうだ。こんな時に水を差すようで言えない。それに同情されたり、いろいろ心配されたり気を遣われるのも嫌だしな。

 言い出す機会をうかがって、頭を悩ませた。

「じゃあ、さっそく、周囲には恋仲だと発表しよう」

 乗り気な発言を聞き、ゴホッと咳き込みそうになる。

「いえ、そんな大体的にするつもりありません! それに神託おりていますよね?」

 そうだ王太子と聞き、思い出した。

『魔力と剣が結ばれし時、国にさらなる祝福と繁栄をもたらすであろう』

 魔力が強い女性と結ばれる、と神託は告げているのだ。つまり王宮魔術師や地位のある相手だと思う。
 アレク様はどこかムッとした様子で口を結ぶ。

「俺は自分の運命を、他人に勝手に決められるのは納得いかない。自分で選ぶ」

 はっきりと言い切った彼から、運命は自分の手でつかむという強い意志を感じた。
 そうか、私も余命という運命に少しでも抗おうとしている。つまり同志かもしれない。

 彼となら――うまくやっていけるかもしれない。

「これからよろしくお願いします」

 スッと手を差し出すと、アレク様は私の手を取り、ギュッと握りしめた。
 むしろ王太子が恋人となれば、家族も周囲の人間も私に手を出せないだろう。

「私、テオドールが完璧に健康になるまで、最後まで力になります」

 呪いは消え去ったはずだが、しばらく様子を見よう。これが、仮初の恋人の交換条件よ。

「でも……」

 私は唇をギュッと結び、アレク様の目を見つめる。

「本当に好きな人ができたら、言ってくださいね」

 そうだ、その時は私の都合でいつまでも縛っていていいわけじゃない。すぐさま解放してあげよう。
 私の申し出にアレク様はスッと目を細めた。

 あれ? なんだか不機嫌になっていない?

「好きな人? 君にはいるのか、そんな相手が」

 低く問い詰めるような声に首をブンブンと横に振る。
 私の様子を見たアレク様は頬を緩ませた。

「さっそくなんだが、周囲に恋人と思わせるためには、身内にもだ」

 彼の言うことはもっともだ。
 騙しているみたいで心苦しさもあるが、どこからかこの関係が漏れては困るからだ。

「まずは手始めに、敬語も呼び名も変えてもらう」
「わかりました、アレク様」

 返答するとアレク様は呆れたように肩をすくめた。

「はっ、先が思いやられるな」
「が、頑張ります……!」
「ほら、また」

 アレク様は苦笑するが、急には難しい。

「呼んでみるといい。アレク、と――」
「えっ……」

 私の手を握ったまま、ジッと見つめてくる。端整な顔立ちにドキドキする。

「アレク」

 意を決して名前を呼ぶと、彼は頬を綻ばせた。
 少年のような無邪気な微笑みを見て、胸が高鳴った。