「なによ、怖気づいてしまって情けないわ!」
レオナだけは変わらず、すごい剣幕で怒っていた。
「お姉さまのくせに、調子に乗っているみたいね! いいわ、お父さまに言いつけてやるんだから! 私が優しく注意してあげるうちに帰らなかったこと、後悔するんだからね」
レオナはフンと顔を上げる。
「行くわよ」
さっきから様子のおかしくなったギルバートを無理やり馬車に押し込めるレオナ。
「もう来ないでね」
最後に念を押すが、無視したレオナも馬車に乗り込んだ。荒々しく扉を閉めると、この場を去った。
馬車が見えなくなると、ドッと疲れが出て、大きく息を吐き出した。
なんなの、もう。離れられて元気にやっていたのに、また私の生活をかき乱すつもりなのかしら。
頭が痛くなってくる。
「ずいぶん、愉快なのと婚約していたんだな」
「元ですから、元! それに私の意志じゃありませんので」
親が勝手に決めた婚約者。ギルバートがあそこまで私に固執しているとは思わなかった。下に見ていた私から一方的に破談にされて悔しいのと、ノクティス家との繋がりが惜しくなったのだろう。
頭を抱えていると頭上から声が聞こえた。
「――では、婚約発表はいつにする?」
「は……?」
意味が理解できなく、反射的に顔を上げる。そこには満面の笑みを浮かべるアレク様がいた。
「冗談ですよね?」
私を守ってくれたことには感謝している。だが、そこまでしなくてもいい。迷惑をかけるわけにもいかないから。
それにそんなサラッとした口調で。ちょっと街へ出かけるか、みたいな軽いお誘い。
そんなのでいいわけないでしょ。
私の顔に出ていたのだろう、アレク様が肩を揺らして笑う。
「別に冗談ではないのだが。君には弟を救ってもらった恩がある。あの時の恩をこれで返せるのなら、いい案だと思うのだが。それに今さら撤回もできないだろう」
アレク様の発言にハッとする。
確かにレオナのことだから、屋敷に戻ったら大騒ぎするはずだわ。
当然、両親の耳にも入る。
もしかして私を連れ戻そうと、今度は家族総出で迎えに来たらどうしよう。
そう考えると、確かに婚約者という後ろ盾がある方が、家族も簡単に手出しができないかもしれない。
それにどうせ、私の寿命は決まっている。仮の婚約をしても、本当の意味で彼を縛ることはない。
ここにいる間だけでも、家族の監視から逃れられるのなら――。
思い悩んでいる間、辛抱強く私の側で待つアレク様。
人目を惹く容姿に、上質な素材で作られている服。動作に品があるし雰囲気が違う。
はっきりと出自を聞いたことはないけれど、高位貴族に違いない。
ノクティス家と同格ぐらいかしら。
「俺も――とある理由から、自分の意志と反して、婚約させられそうなんだ」
ぽつりとつぶやいたアレク様は両腕を組んだ。
「会ったこともない相手だが、周りから固められそうで、抗っている」
「そうなのですね……」
貴族は政略結婚が普通で、恋愛結婚は稀だ。
私だって我慢するつもりでいた。――前までは。
レオナだけは変わらず、すごい剣幕で怒っていた。
「お姉さまのくせに、調子に乗っているみたいね! いいわ、お父さまに言いつけてやるんだから! 私が優しく注意してあげるうちに帰らなかったこと、後悔するんだからね」
レオナはフンと顔を上げる。
「行くわよ」
さっきから様子のおかしくなったギルバートを無理やり馬車に押し込めるレオナ。
「もう来ないでね」
最後に念を押すが、無視したレオナも馬車に乗り込んだ。荒々しく扉を閉めると、この場を去った。
馬車が見えなくなると、ドッと疲れが出て、大きく息を吐き出した。
なんなの、もう。離れられて元気にやっていたのに、また私の生活をかき乱すつもりなのかしら。
頭が痛くなってくる。
「ずいぶん、愉快なのと婚約していたんだな」
「元ですから、元! それに私の意志じゃありませんので」
親が勝手に決めた婚約者。ギルバートがあそこまで私に固執しているとは思わなかった。下に見ていた私から一方的に破談にされて悔しいのと、ノクティス家との繋がりが惜しくなったのだろう。
頭を抱えていると頭上から声が聞こえた。
「――では、婚約発表はいつにする?」
「は……?」
意味が理解できなく、反射的に顔を上げる。そこには満面の笑みを浮かべるアレク様がいた。
「冗談ですよね?」
私を守ってくれたことには感謝している。だが、そこまでしなくてもいい。迷惑をかけるわけにもいかないから。
それにそんなサラッとした口調で。ちょっと街へ出かけるか、みたいな軽いお誘い。
そんなのでいいわけないでしょ。
私の顔に出ていたのだろう、アレク様が肩を揺らして笑う。
「別に冗談ではないのだが。君には弟を救ってもらった恩がある。あの時の恩をこれで返せるのなら、いい案だと思うのだが。それに今さら撤回もできないだろう」
アレク様の発言にハッとする。
確かにレオナのことだから、屋敷に戻ったら大騒ぎするはずだわ。
当然、両親の耳にも入る。
もしかして私を連れ戻そうと、今度は家族総出で迎えに来たらどうしよう。
そう考えると、確かに婚約者という後ろ盾がある方が、家族も簡単に手出しができないかもしれない。
それにどうせ、私の寿命は決まっている。仮の婚約をしても、本当の意味で彼を縛ることはない。
ここにいる間だけでも、家族の監視から逃れられるのなら――。
思い悩んでいる間、辛抱強く私の側で待つアレク様。
人目を惹く容姿に、上質な素材で作られている服。動作に品があるし雰囲気が違う。
はっきりと出自を聞いたことはないけれど、高位貴族に違いない。
ノクティス家と同格ぐらいかしら。
「俺も――とある理由から、自分の意志と反して、婚約させられそうなんだ」
ぽつりとつぶやいたアレク様は両腕を組んだ。
「会ったこともない相手だが、周りから固められそうで、抗っている」
「そうなのですね……」
貴族は政略結婚が普通で、恋愛結婚は稀だ。
私だって我慢するつもりでいた。――前までは。
