「そうそう、お前はレオナと違って魔力もないのだから。レオナの邪魔だけはしないこと!」
ここに来た当初から私を蔑む義母を側で見続けたせいか、レオナも同じ態度を私に取る。
「本当に、お姉さまって冴えないわよね」
レオナが笑いながら私の前に立つ。腕を組み、私をジロジロと見つめたあと、頬に手を添えてため息をつく。
「ボサボサでパサパサの髪に、冴えない服を着て」
仕方ないじゃない。私はあなたと違って、親にお金をかけてもらっていないのだから。髪につける香油もなければ、ドレスだって新調したのは何年前のことになるのか。正直、使用人の方がきれいな格好をしているんじゃないかしら? 自分でも思う時がある。
「極めつけはその変な眼鏡」
レオナはビシッと指をつきつけた。
「便利よ、この眼鏡。小さい字もはっきりと見えるし」
「まあ、お姉さまにお似合いね。それがあるから、そばかすも隠れているし」
レオナは私をこき下ろして満足したのか、コロコロと笑う。
「本当にお姉さまってば、恥ずかしい。でも、私という有名な妹がいることに、感謝してよね」
レオナは王宮魔術師の候補者として、またその美貌のおかげで有名だった。確かに、黙っていれば人目をひくかわいらしさだ。
だだ、性格はかなり残念なことになっている。
「王宮魔術師の任命式、その時にまでには少しはマシになってよね」
毎年、神殿には魔力を持つ人々が集い、魔力選定の儀式が執り行われる。その年で最も強く魔力を持つ者が王宮魔術師に任命されるのだ。儀式は十七歳から参加資格があり、レオナは今年儀式を受けるそうだ。
もう決定事項のように話すけれど、まだ決まっていないじゃない。それに私が綺麗な格好をしたら、文句を言うに決まっている。レオナは私が目立つことを許さなかった。
「お姉さまも誇らしいでしょう? 私が王宮魔術師になったら。残念なことにお姉さまは無能だけど!」
レオナは私のことを魔力なし、つまり無能とあてこすってくる。いつものことだが、聞き飽きた。他に言うことはないのかと思うぐらい。まあ、レオナの語彙力ではこれが限界なのだ。
「私と同じ年頃で魔力を持つ女性の話を聞いたことがないし、王族に嫁入りするのは、もう決まったも同然よね」
レオナがやけに自信を持っているのは、神殿の神託のせいだ。
この国の王太子が誕生した時、神託が出たらしい。
『魔力と剣が結ばれし時、国にさらなる祝福と繁栄をもたらすであろう』
実際、この第一王子は国一番の剣士とも噂されていた。公式の場以外にあまり顔を出さないので、直接見たことはないが、すごく美男子だとも聞いていた。
だからこそ、レオナは魔力を持つ自分こそが、王族に嫁ぐのだと信じて疑わない。
ま、無理だと思うけどね。
仮に王太子妃となったのなら、日々の教育も大事だと思うが、レオナは学ぶことがなによりも嫌いだ。
魔力の勉強でさえ、お腹が痛いだの、気持ちが悪いだのさまざまな理由をつけてはさぼっている。
与えられた課題すらこなさず、家庭教師も何人交代したことか。
義母は家庭教師が悪いせいだとなじったが、それは違う。まずは自分の娘のさぼり癖をどうにかしたほうがいい。
この調子ではいくら家庭教師を交代したところで同じことだ。本人のやる気なしではどうにもならない。
いくら魔力持ちだからと言って、能力の上にあぐらをかいて怠惰な日々だと思う。
仮にレオナが王太子妃となったら、この国から逃げ出すことを考えるわ、私。
泥船に乗るようなものですもの!
それぐらいレオナの学習態度はもちろん、性格はひどかった。
わがままで自己中心的で優しさのかけらもない。家庭教師の先生を何人も泣かせてきた。
仮に私が魔力について学べるのなら、一生懸命に受けるわ。課題だってきちんとやるし、わからないことは進んで質問して、予習だってやる。
だけど私に家庭教師がついたことはない。――なぜなら魔力がないから。
一度だけレオナと一緒に授業を受けさせて欲しいと頼み込んだが、却下された。時間の無駄だと言われて。
だけど幼い頃から魔力に興味があった。選ばれし人が作り出す、不思議な力にひかれていた。
だからこそ、独学で魔力に関する本を読み漁っていた。
レオナも義母もそんな私をバカにした。無能なのに、無駄なことだって。
でもね、いつかこの知識も役立つかもしれないじゃない。魔力に目覚める可能性もないとは言い切れないのだし。今は知識を増やしているだけだけど、本を読んでいるだけですごく勉強になる。
あきらめなければ、いつかどうにかなるかもしれない。可能性を捨てきれないため、知識だけでも吸収する日々だ。それに本を読んでいると、広い世界に触れることができる。あまり屋敷の外に出る機会がない私にとって、新しい世界に飛び出ているような感覚でワクワクするの。
「ほら、お姉さま、さぼってないで早く行ったら? 無能なりに自分のできることをやったら?」
考え事をしているとレオナが急かしてくる。
「そうよ、リディア。ボーッとしてないで、早く行きなさい。まったく鈍くさいんだから」
義母は手でシッシッと私を追い立てる仕草をするが、こんなのもう慣れっこだ。
「はい、わかりました」
やっとこの二人から解放されることをホッとしつつ、あてがわれている仕事部屋へと向かった。
ここに来た当初から私を蔑む義母を側で見続けたせいか、レオナも同じ態度を私に取る。
「本当に、お姉さまって冴えないわよね」
レオナが笑いながら私の前に立つ。腕を組み、私をジロジロと見つめたあと、頬に手を添えてため息をつく。
「ボサボサでパサパサの髪に、冴えない服を着て」
仕方ないじゃない。私はあなたと違って、親にお金をかけてもらっていないのだから。髪につける香油もなければ、ドレスだって新調したのは何年前のことになるのか。正直、使用人の方がきれいな格好をしているんじゃないかしら? 自分でも思う時がある。
「極めつけはその変な眼鏡」
レオナはビシッと指をつきつけた。
「便利よ、この眼鏡。小さい字もはっきりと見えるし」
「まあ、お姉さまにお似合いね。それがあるから、そばかすも隠れているし」
レオナは私をこき下ろして満足したのか、コロコロと笑う。
「本当にお姉さまってば、恥ずかしい。でも、私という有名な妹がいることに、感謝してよね」
レオナは王宮魔術師の候補者として、またその美貌のおかげで有名だった。確かに、黙っていれば人目をひくかわいらしさだ。
だだ、性格はかなり残念なことになっている。
「王宮魔術師の任命式、その時にまでには少しはマシになってよね」
毎年、神殿には魔力を持つ人々が集い、魔力選定の儀式が執り行われる。その年で最も強く魔力を持つ者が王宮魔術師に任命されるのだ。儀式は十七歳から参加資格があり、レオナは今年儀式を受けるそうだ。
もう決定事項のように話すけれど、まだ決まっていないじゃない。それに私が綺麗な格好をしたら、文句を言うに決まっている。レオナは私が目立つことを許さなかった。
「お姉さまも誇らしいでしょう? 私が王宮魔術師になったら。残念なことにお姉さまは無能だけど!」
レオナは私のことを魔力なし、つまり無能とあてこすってくる。いつものことだが、聞き飽きた。他に言うことはないのかと思うぐらい。まあ、レオナの語彙力ではこれが限界なのだ。
「私と同じ年頃で魔力を持つ女性の話を聞いたことがないし、王族に嫁入りするのは、もう決まったも同然よね」
レオナがやけに自信を持っているのは、神殿の神託のせいだ。
この国の王太子が誕生した時、神託が出たらしい。
『魔力と剣が結ばれし時、国にさらなる祝福と繁栄をもたらすであろう』
実際、この第一王子は国一番の剣士とも噂されていた。公式の場以外にあまり顔を出さないので、直接見たことはないが、すごく美男子だとも聞いていた。
だからこそ、レオナは魔力を持つ自分こそが、王族に嫁ぐのだと信じて疑わない。
ま、無理だと思うけどね。
仮に王太子妃となったのなら、日々の教育も大事だと思うが、レオナは学ぶことがなによりも嫌いだ。
魔力の勉強でさえ、お腹が痛いだの、気持ちが悪いだのさまざまな理由をつけてはさぼっている。
与えられた課題すらこなさず、家庭教師も何人交代したことか。
義母は家庭教師が悪いせいだとなじったが、それは違う。まずは自分の娘のさぼり癖をどうにかしたほうがいい。
この調子ではいくら家庭教師を交代したところで同じことだ。本人のやる気なしではどうにもならない。
いくら魔力持ちだからと言って、能力の上にあぐらをかいて怠惰な日々だと思う。
仮にレオナが王太子妃となったら、この国から逃げ出すことを考えるわ、私。
泥船に乗るようなものですもの!
それぐらいレオナの学習態度はもちろん、性格はひどかった。
わがままで自己中心的で優しさのかけらもない。家庭教師の先生を何人も泣かせてきた。
仮に私が魔力について学べるのなら、一生懸命に受けるわ。課題だってきちんとやるし、わからないことは進んで質問して、予習だってやる。
だけど私に家庭教師がついたことはない。――なぜなら魔力がないから。
一度だけレオナと一緒に授業を受けさせて欲しいと頼み込んだが、却下された。時間の無駄だと言われて。
だけど幼い頃から魔力に興味があった。選ばれし人が作り出す、不思議な力にひかれていた。
だからこそ、独学で魔力に関する本を読み漁っていた。
レオナも義母もそんな私をバカにした。無能なのに、無駄なことだって。
でもね、いつかこの知識も役立つかもしれないじゃない。魔力に目覚める可能性もないとは言い切れないのだし。今は知識を増やしているだけだけど、本を読んでいるだけですごく勉強になる。
あきらめなければ、いつかどうにかなるかもしれない。可能性を捨てきれないため、知識だけでも吸収する日々だ。それに本を読んでいると、広い世界に触れることができる。あまり屋敷の外に出る機会がない私にとって、新しい世界に飛び出ているような感覚でワクワクするの。
「ほら、お姉さま、さぼってないで早く行ったら? 無能なりに自分のできることをやったら?」
考え事をしているとレオナが急かしてくる。
「そうよ、リディア。ボーッとしてないで、早く行きなさい。まったく鈍くさいんだから」
義母は手でシッシッと私を追い立てる仕草をするが、こんなのもう慣れっこだ。
「はい、わかりました」
やっとこの二人から解放されることをホッとしつつ、あてがわれている仕事部屋へと向かった。
