【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

 横からギャーギャーとわめきたてる二人。揃いも揃って人の話に耳を傾けない人たちにうんざりする。

「君の気持ちはわかったから、まずは帰ろう」

 いきなりギルバートからギュッと手首をつかまれ、背筋がゾッとした。

「離して!!」

 どうしよう、いくらギルバートが細身でも、力では男性に適わない。

 いっそ、ここで魔力を使って蹴散らしてしまう!?

 でも、すぐにそれはダメだと思い直す。私が魔力を使えると知られてしまったら、ノクティス家はまた私を利用しようと、必死になるはずだ。

 それこそ、私の自由は奪われる――。

 ここでは魔力を隠しておいた方が得策だ。

「早く帰りましょう、お姉さま。話なら馬車の中で聞いてあげるから」

 レオナは私を馬車に押し込めようと背後に回る。
 二人かがりで来られてピンチに陥る。

「やめ――!!」

 もう辛抱できない、私の考えとは裏腹に体が彼らを拒否し、心臓がドクドクと脈を打ち始めた。魔力が手のひらに集中し始めたその時――。

「なにをやっている」

 低い声が聞こえ、視線を向けた先にいた人物に目を見張る。

 陽光を受けて柔らかく輝く金の髪。澄み渡る湖面のように静かな瞳で、冷静な眼差しをこちらに向けているのはアレク様だった。

 助かった!!

 私を拘束する二人の手が緩んだ隙に、アレク様に駆け寄る。
 勢い余って目の前で足がもつれて転びそうになるが、アレク様が腕をつかんでくれた。

「大丈夫か?」

 フワッとシトラスの香りに安心感を覚える。私を心配する眼差しに胸の奥がキュッとなる。
 アレク様は私を背後にかばうように立った。

「君たちは、誰だ? リディアに何の用があるんだ?」

 低く険しい声を前にした二人は怖気づいてしまったようで、ソワソワして視線を逸らす。

「あ、あなたこそ、どちら様? お姉さまと、どういった関係かしら?」

 そうだ、こうすれば――。

 ごくりと喉を鳴らし、声を張り上げた。

「わ、私、この人と付き合っているの!!」

 アレク様の隣に立ち、はっきりと言い放つ。

 そうだ、私に恋人がいると知れば、ギルバートはあきらめるだろう。レオナだって恋人の目があるなら、私を無理やり連れて帰ろうとしないはずだ。

 隣に並ぶアレク様に、頼むから話を合わせてくれと、視線を投げた。