【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

 その後、セレフィアをいったん、私の家に持ち帰ってきた。明日、これを使ってテオドールを解呪する。万が一にも間違いがあってはいけないので、薬草図鑑で確認をした。

 呪い――。

 これでテオドールが元気になってくれたら一番いいけど、呪った犯人は誰なんだろう。

 そしてもし呪いだとしたら、一応準備しておいた方がいいことがある。
 私はドレッサーの引き出しからコンパクトになっている鏡を取り出した。それをカゴにしまうと明日に備えた。

 翌日、早朝から迎えが来て、テオドールの元へと向かう。もちろんん、昨日摘んだセレフィアを入れたカゴを手にして。

「テオドール、この花を持ってくれる?」

 アレク様と私が見守る中、テオドールはコクンとうなずいた。セレフィアを手渡し、テオドールの背中の部分を寝間着から見えるようにした。

「私が合図をしたら、花の蜜を飲んでくれる?」

 コクンとうなずくテオドールの頭をそっと撫でると、黒いあざに触れる。テオドールの体がビクンと震えた。

 やがて合図をするとテオドールが花の蜜を口に含んだ。
 背中に魔力を流し込むと、直後に黒いあざが動き出した。

 あっ! やっぱり……!!

 この反応を見せるということは呪いで間違いない。

 まるで生きているように動くあざは、意志を持っているようだ。身をうねっているその姿は、セレフィアの解呪作用に苦しんでいるのだと感じた。

「逃がすかぁ!」

 私は集中してありったけの魔力を込めると、あざをむんずとつかんだ。するとテオドールの体から離れた黒いモノが、私の手の中で蠢いている。

「あんたの入るのは、ここよっ!!」

 準備していた鏡を取り出すと、黒いモノに押しつけた。不思議なことにまるで吸い込まれるように鏡の中に消えた。
 鏡を見ると、さきほどまでテオドールの体にいたものが中で蠢いている。
 良かった、これでひとまず解呪に成功だわ。じんわりと額にかいた汗を拭う。
 テオドールは目をパチクリとさせると、大きく深呼吸した。

「……さっきまで体が重かったのに、すごく楽になった気がする」
「それがあなたの本来の体調よ。悪いものをとったから、もう大丈夫よ」

 テオドールはまじまじと私を見つめる。

「本当に? こんなに軽いの?」
「ええ」

 テオドールはそう言うが、まだ本調子ではないはずだ。だが黒いあざを切り離した以上、今後は徐々に調子を取り戻すだろう。

「嬉しいリディア、ありがとう!」

 テオドールが私に抱き着いたので、私もしっかりと抱きしめた。

「お兄さまもありがとう!!」

 テオドールの満面の笑みを見て満ち足りた気持ちになり、アレク様と目を合わせた。