「下がっていろ、リディア」
「でも……!!」
アレク様は大丈夫なの?
小動物が集まっている時点で気づけば良かった。大きな動物たちにとっても、ここは水飲み場なのだと。
向かってくる熊をアレク様はわざと挑発し、私と距離を取る。
熊が前足を振り上げ、地面をえぐるように突進してくる。
太い腕を振り上げる熊の攻撃をひらりとかわしたアレク様だが、あれを受けたら無傷ではすまない。
熊が怒りに満ちた咆哮を上げる。
緊迫に満ちた空気の中、またもや茂みから音がした。そこから姿を現したのは小さな熊だった。
まさか親子なの⁉。
アレク様を守らなきゃ。でも……!!
全身が熱くなり、手のひらに魔力が集まってくる。熊に向かって両手を向ける。
「お願い、止まって!!」
私がかざした両手から青白い霧が熊の周囲に広がる。それは熊の全身を包み込むと、まぶたを閉じた熊がその場に崩れ落ちた。
いきなり倒れ込んだ熊にアレク様も驚いている。だが、死んではいないはずだ。その証拠に胸が上下している。とっさに魔力で睡眠へ誘うイメージをかけたが、上手く効いたみたいだ。
「あ、あれ……」
茂みを指さすと、そこにいた子熊を見て、アレク様は理解したようだ。
「子を守ろうとしたのだろうな」
アレク様は小さくうなずく。
「確かに、ここでの部外者は俺たちの方だ。彼らの住処を荒らしたよそ者だ。警戒されるのも無理もない」
アレク様はそっと腰を折ると、セレフィアに手をかけた。
「摘んで帰るとしよう」
「はい」
とりあえずもくもくと手織り、カゴに摘んだ。
「――その力、すごいな」
「えっ、そ、そうです? ありがとうございます」
急に褒められたので、ドキッとした。
「ああ。とっさに眠らせなければ、切っていたと思う。それなら、かわいそうなことをした」
アレク様が視線を向けた先には、子熊が不安そうに親に寄り添っていた。
「魔力は昔から使えるのか?」
「いいえ。ここ最近です」
そこで私は正直に話すことにした。どうせテオドールの件で私の力は知られているのだから。
家を出た時から、徐々に魔力が使えるようになったこと、そのほとんどが独学だということも。もちろん、ノクティス家のことと、寿命のことは内緒にしたけれど。
「王宮魔術師に認定されようとは思わないのか?」
「私が? まさか!」
首を大きく横に振る。
王宮魔術師に属するとなると、しがらみも大きい。自由に癒しのしずくを作って配布もできないだろう。
それになによりもう、人に縛られるのは嫌だ。残りの人生は好きに生きると決めたのだから。
「名声を手にするのは興味ないので。目の前の救える命を救いたい、ただそれだけです」
私の返答を聞き、アレク様は柔らかく微笑んだ。
「でも……!!」
アレク様は大丈夫なの?
小動物が集まっている時点で気づけば良かった。大きな動物たちにとっても、ここは水飲み場なのだと。
向かってくる熊をアレク様はわざと挑発し、私と距離を取る。
熊が前足を振り上げ、地面をえぐるように突進してくる。
太い腕を振り上げる熊の攻撃をひらりとかわしたアレク様だが、あれを受けたら無傷ではすまない。
熊が怒りに満ちた咆哮を上げる。
緊迫に満ちた空気の中、またもや茂みから音がした。そこから姿を現したのは小さな熊だった。
まさか親子なの⁉。
アレク様を守らなきゃ。でも……!!
全身が熱くなり、手のひらに魔力が集まってくる。熊に向かって両手を向ける。
「お願い、止まって!!」
私がかざした両手から青白い霧が熊の周囲に広がる。それは熊の全身を包み込むと、まぶたを閉じた熊がその場に崩れ落ちた。
いきなり倒れ込んだ熊にアレク様も驚いている。だが、死んではいないはずだ。その証拠に胸が上下している。とっさに魔力で睡眠へ誘うイメージをかけたが、上手く効いたみたいだ。
「あ、あれ……」
茂みを指さすと、そこにいた子熊を見て、アレク様は理解したようだ。
「子を守ろうとしたのだろうな」
アレク様は小さくうなずく。
「確かに、ここでの部外者は俺たちの方だ。彼らの住処を荒らしたよそ者だ。警戒されるのも無理もない」
アレク様はそっと腰を折ると、セレフィアに手をかけた。
「摘んで帰るとしよう」
「はい」
とりあえずもくもくと手織り、カゴに摘んだ。
「――その力、すごいな」
「えっ、そ、そうです? ありがとうございます」
急に褒められたので、ドキッとした。
「ああ。とっさに眠らせなければ、切っていたと思う。それなら、かわいそうなことをした」
アレク様が視線を向けた先には、子熊が不安そうに親に寄り添っていた。
「魔力は昔から使えるのか?」
「いいえ。ここ最近です」
そこで私は正直に話すことにした。どうせテオドールの件で私の力は知られているのだから。
家を出た時から、徐々に魔力が使えるようになったこと、そのほとんどが独学だということも。もちろん、ノクティス家のことと、寿命のことは内緒にしたけれど。
「王宮魔術師に認定されようとは思わないのか?」
「私が? まさか!」
首を大きく横に振る。
王宮魔術師に属するとなると、しがらみも大きい。自由に癒しのしずくを作って配布もできないだろう。
それになによりもう、人に縛られるのは嫌だ。残りの人生は好きに生きると決めたのだから。
「名声を手にするのは興味ないので。目の前の救える命を救いたい、ただそれだけです」
私の返答を聞き、アレク様は柔らかく微笑んだ。
