ルミナの森はうっそうと木が生い茂る。人々はあまり近寄らない場所だと聞いている。だが、狩人たちが時折山に入るので、かろうじて道があったのは救いだった。
「大丈夫か?」
私の前を歩くアレク様は涼しい顔で振り返る。
「まっ、まぁ、なんとか……」
ぜぇぜぇ息を切らす私をアレク様は笑う。
療養施設に行った時も思ったけどこの方、本当に体力がある。
尊敬していると手をスッと伸ばされた。
「荷物を持とう」
「ありがとうございます」
この人、行動の一つ一つが洗練されていてスマートなのよね。ノクティス家と同等、もしくはそれ以上の家門かもしれない。
あえて聞いてはいないけれど、どこの家門の方なのかしら。どことなく触れてはいけない雰囲気を感じるが、私の方こそ探られたくない。ノクティス家とは縁を切ったつもりなのだから。
それからどのぐらい歩いただろう。
「着いたぞ」
ぐんぐん進むアレク様についていくのに必死になって足元を見ていた。
急に声がかけられハッとして前を向くと、目前に広がる光景に息をのむ。
大きな湖は鏡のような水面を広げていた。
水面は風もなく、空と木々をそのまま映している。鳥の声だけが響き、時間が止まったような場所だった。
このどこかにセレフィアの花が――。
「セレフィアは青い花で一枚だけ白い花弁を持ちます、きっとどこかにあるはず。探しましょう!」
私たちは湖のほとりを歩いて回った。
鹿やウサギ、湖の近くでは小動物の姿がチラチラ見える。きっとここは動物達の水飲み場となっているのだろう。
どのぐらい歩いただろうか、半周ほど進むと、青い群衆となっている花が見えた。
「あれは――」
図鑑で見るよりずっと深い色で、風に揺れるたびにほのかに光っていた。
アレク様と顔を見合わせてうなずくと、私たちは駆け足で近づく。
地面に膝をついて花の群衆に顔が近づくと、甘い香りがする、すっと立ち上がる花茎に花弁が五枚で、そのうちの一枚だけ白い。葉に白い筋が入っているのが図鑑の特徴と一致していた。
「あった、あったわ!」
これでテオドールを救える望みが出た。
興奮していると木々の間がガサガサと揺れた。
誰かいるの……!?
気配を察知してパッと振り返る。アレク様は剣を構え、私の前に立つ。すでに戦闘態勢だった。
やがてグルルルルと、低く唸る声が聞こえた。声を聞いただけで背筋がスッと冷えた。
私が立ち上がると同時に木々の間から姿を現したのは、全身を黒い毛で覆った巨大な熊だ。
その目は獲物を見定めるように鋭く光っている。私の身長をはるかに超える体格に息をのんだ。
まさか、こんな大きな動物と遭遇してしまうなんて……!
念のため、熊よけの鈴をカゴにつけていたが、意味がなかったのかもしれない。
「大丈夫か?」
私の前を歩くアレク様は涼しい顔で振り返る。
「まっ、まぁ、なんとか……」
ぜぇぜぇ息を切らす私をアレク様は笑う。
療養施設に行った時も思ったけどこの方、本当に体力がある。
尊敬していると手をスッと伸ばされた。
「荷物を持とう」
「ありがとうございます」
この人、行動の一つ一つが洗練されていてスマートなのよね。ノクティス家と同等、もしくはそれ以上の家門かもしれない。
あえて聞いてはいないけれど、どこの家門の方なのかしら。どことなく触れてはいけない雰囲気を感じるが、私の方こそ探られたくない。ノクティス家とは縁を切ったつもりなのだから。
それからどのぐらい歩いただろう。
「着いたぞ」
ぐんぐん進むアレク様についていくのに必死になって足元を見ていた。
急に声がかけられハッとして前を向くと、目前に広がる光景に息をのむ。
大きな湖は鏡のような水面を広げていた。
水面は風もなく、空と木々をそのまま映している。鳥の声だけが響き、時間が止まったような場所だった。
このどこかにセレフィアの花が――。
「セレフィアは青い花で一枚だけ白い花弁を持ちます、きっとどこかにあるはず。探しましょう!」
私たちは湖のほとりを歩いて回った。
鹿やウサギ、湖の近くでは小動物の姿がチラチラ見える。きっとここは動物達の水飲み場となっているのだろう。
どのぐらい歩いただろうか、半周ほど進むと、青い群衆となっている花が見えた。
「あれは――」
図鑑で見るよりずっと深い色で、風に揺れるたびにほのかに光っていた。
アレク様と顔を見合わせてうなずくと、私たちは駆け足で近づく。
地面に膝をついて花の群衆に顔が近づくと、甘い香りがする、すっと立ち上がる花茎に花弁が五枚で、そのうちの一枚だけ白い。葉に白い筋が入っているのが図鑑の特徴と一致していた。
「あった、あったわ!」
これでテオドールを救える望みが出た。
興奮していると木々の間がガサガサと揺れた。
誰かいるの……!?
気配を察知してパッと振り返る。アレク様は剣を構え、私の前に立つ。すでに戦闘態勢だった。
やがてグルルルルと、低く唸る声が聞こえた。声を聞いただけで背筋がスッと冷えた。
私が立ち上がると同時に木々の間から姿を現したのは、全身を黒い毛で覆った巨大な熊だ。
その目は獲物を見定めるように鋭く光っている。私の身長をはるかに超える体格に息をのんだ。
まさか、こんな大きな動物と遭遇してしまうなんて……!
念のため、熊よけの鈴をカゴにつけていたが、意味がなかったのかもしれない。
