【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

「それは子供たちに配るのか?」

 アレク様の視線は私が持ってきたカゴに注がれていた。

「はい、そうです。焼き菓子と私が作った回復薬の、癒しのしずくです。薬草を煎じて魔力を込めました。ポーショとまでいかなくても、少しは病気に効くはずです。子供用に甘くしましたし」

 本当はテオドールみたいに直接魔力で治療できたらいいのだけど、目立つことはしたくないので、こうやってこっそりと治療しよう。

「王宮魔術師が管理しているポーショは高くて手が出ませんからね」

 正規のポーションの値段は五百ギル。庶民の一年間の収入が平均で四百ギルといわれてるなかで、かなり高額にあたる。

「どうしてそこまでするんだ?」
「……亡き母が人を救いたいと言っていたのと、あとは単純に人を助けることができるのなら、力になりたいからです」

 もう少しで亡くなる私だけど、私の魔力で彼らが生き延びてくれるなら、嬉しいことだわ。

「まあ、自己満足とでも思っていただければ」

 本当のことを口にするわけにもいかず、ニコッと微笑むとアレク様もつられた。
 私はスッと立ち上がると、声を張り上げた。

「皆、手を洗ったら、おやつにしましょう!!」

 私の一声で歓声が上がる。子供たちがわらわらと集まって来た。

「さあ、アレク様、配るのを手伝ってください」

 アレク様は苦笑しながら立ち上がり、手伝ってくれた。そして皆が癒しのしずくを飲む様子を観察したあと、帰路についた頃はもう日が沈みかけていた。

 数日後、本を片手に調べていると、該当する箇所を見つけた。

「あった……!!」

 私にはどうしてもテオドールの症状がただの原因不明の病気だとは思えなかったのだ。なによりも体に触れた時の、なんとも言えない不快感。これはなにかあると、私の直感が告げている。

 テオドールと似た症状を見つけ、ごくりと息をのむ。

「黒いあざ……徐々に広がり、体を蝕むのは――呪い」

 読み終えた時、ピンときた。きっとこれに違いないと。

 テオドールは呪われている。いったい、誰があんな幼い子にひどいことを……。
 怒りがわきあがるが、相手を探すよりも、今は解決する方が先だ。
 それに呪いなら、私の治癒の魔力は一時的な効果しかないのだから。

 私は次に呪いについて関する本を読み漁り、ヒントを見つけた。

 これからテオドールを救えるかもしれない。

 決意と共にギュッと手を握りしめた。

 いつものようにテオドールを治療した帰り、屋敷内を歩く。
 私は呪いのことをアレク様に話そうか迷った。

 でもいきなり呪いとか言われたら、びっくりするだろうし。確かな証拠もないのに失礼よね。
 かといって呪いを解く方法を、勝手に試すわけにはいかないだろうし……。

「リディア」

 一人で悶々と頭を悩ませていると、声がかかる。
 そこには眉根を寄せ、私を見ているアレク様がいた。彼は私の腕をグッとつかみ、引き寄せた。

「なにをそんなに悩んでいる」
「ば、ばれました?」
「顔に出すぎた」

 アレク様は壁に私を押し付ける。そして壁に手を突き、私を逃がすまいとする。
 端整な顔立ちの彼が立ちはだかり、逃げ場がなくて動揺する。

「――テオドールに関することか?」

 勘の鋭い彼から質問され、ビクッと肩が揺れる。

「図星だな」

 アレク様は壁から手を離すと、私についてくるように視線を投げた。