この恋に名前をつけるとするならば


ライブが終わり、熱く激しかったライブの余韻に浸るわたし···――――
ではなく、ファンの人たちに紛れてやっとライブハウスから抜け出せたわたしは、外に出た瞬間にグッタリとしてしまった。

(ライブがこんなにエネルギー消費するものだったなんて聞いてない······)

わたしはライブハウスの陰にしゃがみ込むと、生温い夜風に当たりながらクールダウンしようとしていた。

飲み物も持たずに入ってしまった事を後悔しながら、クラクラする頭を抱えていると、突然誰かに腕を掴まれ、わたしは驚きながらふと顔を上げた。

「しーっ。」

そう言って、人差し指を口元に当てる黒いパーカーのフウドを被った男性。
それは、先程までステージ上で輝いていたわたしが知る筈もなかった蔵間さんだった。

「こっち。」

そう言ってわたしの腕を引き、駆け出す蔵間さんに連れられ、わたしはライブハウスの"staff only"の扉から中へと入る。

中に入るとわたしの腕を離し、フウドを取ってこちらを振り向く彼。

目の前に立つ彼は、やはり紛れもなく白猫運輸の蔵間さんだった。

「来てくれたんすね!」
「あ、いや、せっかくチケットを頂いたので···」
「どうでした?俺等のライブ!」

ニカッと笑い、そう言う蔵間さん。
しかし、何だか目の前に立つ蔵間さんが霞んで見えて来てしまった。

そんなわたしの異変に気付いた蔵間さんは「凪原さん?どうしたんですか?大丈夫っすか?」と訊いてくれる。

わたしはそのままゆっくりとその場にしゃがみ込むと、「み、水····っ―――」と声を絞り出した。