この恋に名前をつけるとするならば


ステージの上に立つ蔵間さんは、いつも見るわたしが知ってる蔵間さんとは全くの別人だった。

いつもの爽やかイケメンが、ステージに立つと声にも雰囲気にも色気を感じさせ、揺れる前髪が艶っぽく見えた。

わたしは雷にでも撃たれたかのような衝撃に棒立ちになり、ただただ目の前で歌い奏でる蔵間さんに見惚れていた。

二曲が終わるとMCに入り、蔵間さんが「盛り上がってますかぁー?!」と会場を湧かせる。

ステージの上で脚光を浴びる彼が、まだ蔵間さんだと信じ切れずにいるわたしは、呆然としながら彼を見つめ続けていた。

「いやぁ〜、熱いね!熱くて眼鏡が曇りそうだ。」

そう言って、かけているクロブチ眼鏡をかけ直す蔵間さん。

すると、向かって左側に立つメンバーのギターの人が「何で今日に限って眼鏡なんだよ!」と突っ込みを入れていた。

「いや、昨日さ、コンタクト落としちゃって!」

そう言って笑う蔵間さんの言葉に昨日の出来事が蘇る。

「綺麗なお姉さんが一緒に探してくれたんだけど、結局見つからなくて。だから、今日は眼鏡で失礼します!」

蔵間さんがそう言うと、会場からは「かっこいいー!」「眼鏡でもいいよー!」などの掛け声があがっていた。

「ありがとう!今日は眼鏡だから、あまり激しく動けないけど、いつもと変わらず最高の夜にします!」

蔵間さんはそう言ったあと、チラッとこちらを見て微かに微笑んでくれた気がした。

その微笑みにドキッとさせられるわたし。

(いやいや!いやいやいやいや、気のせい!こんなたくさん人が居る中でわたしが居るのなんて分かるはずない!)

その後もライブは続き、わたしは最後まで高鳴る胸のトキメキが止まらなかった。