この恋に名前をつけるとするならば


それから、とりあえず部屋着に着替えたわたしは、北海道に住む母に電話をかけた。

「お母さんごめん。頼まれてたCD、間違ってうちに届くようにしちゃった。」

わたしがそう言うと、電話越しの母は『なんでよぉー!』と激しく嘆いていた。

『お母さんすっごく楽しみにしてたのにぃー!』
「ごめんて。近い内にそっちに送るから。」
『もう、早めにお願いねぇ?』
「お母さんもいい加減、自分でネット注文出来るようになりなよ。」

わたしはソファーにもたれ掛かり、クッションを抱き締めながら、そろそろ母に自分でネット注文を出来るようになるよう促した。

しかし母はいつもの調子で『お母さん、アナログ人間だから〜』と、覚える気は更々無さそうだ。

『それより、早く聴きたいわ〜!"アシュリー"の新曲!』
「"アシュリー"?そんな名前だっけ?」
『"アッシュリーガル"だから、略して"アシュリー"って呼ばれてるのよぉ!』

わたしなんかよりも気持ちが若者な母に、わたしは「あぁ、そゆことね。」と返した。

『もうボーカルのInochiくんの歌声は最高だし〜、めちゃくちゃイケメンなのよぉ!それでリーダーでギターのいっくんは医師免許持ってるらしくて、頭良いのよぉ〜!キーボードのメイちゃんとは双子の兄妹なんですって〜!』

(あぁ〜、また始まったよ。こりゃ長くなる···)

『それからぁ、ドラムのHaruは〜』
「あー、分かった分かった!もうそれ何回も聞いてるから。それじゃあ、近い内にCD送るね!じゃあねー!」
『あっ!麗月っ···――――』

プチッ

「はぁ······」

母はお喋り好きで、好きなものの話題になると何時間でも話している為、わたしはいつも強制的に電話を切ってしまう。

(お母さんにこのチケットの事、話そうと思ったけど···)

そう思いながら、わたしはテーブルの上に置いた、先程蔵間さんからいただいたチケットに視線を移す。

(ライブ会場はこっちだし、お母さんに言ったところでそんな急に来れないしなぁ。)

だって、ライブチケットに書かれた開演日の日付は、急にも急の明日の土曜日になっているのだから。