この恋に名前をつけるとするならば


「麗月。」

ガスコンロの前に立ち、雅が作ってくれておいた鍋の牛肉を温めようとすると、雅がわたしを呼んだ。

ふと雅の方を見ると、雅はこちらへ歩み寄って来て、それから立ち止まる事なく迫って来る雅にわたしは後退りをし、そして背中が壁にぶつかった。

雅はわたしを挟む形で両手を壁につけると、わたしに顔を寄せて来た。

「ちょ、ちょっと近いってば。」
「麗月、あの男の事、好きなのか?」
「え、えぇ?!な、何よ急に。」
「好きなのか?って訊いてんだよ。」

いつもわたしをからかってばかりの雅が、真剣な眼差しでわたしを問い詰めてくる。

わたしはその瞳から目を逸らしたい気持ちでいっぱいだったが、なぜか魔法でも掛けられてしまったかのように、雅から目を逸らす事が出来なかった。

「答えられないのか?」
「······そ、それは」
「答えないなら、口、塞ぐぞ。」

そう言って、雅はわたしの顎に手を添え、クッと上に上げた。

「俺が男だって事、忘れるなって言ったよな?」

瞬きもせず、真っ直ぐにわたしを見つめてくる雅の鋭い瞳。

こんなにも近い距離で雅の瞳をしっかりと見たのは、この時が初めてだった。

「毎日好きな女を目の前にして、何もせず我慢し続けてる俺の気持ちがわかるか?」
「み、雅?何言ってるの?またからかってるの?」
「俺が今、からかってるように見えるのか?」

雅はそう言ったあと、鼻先が触れるくらいの距離まで更に顔を寄せてくると、「じゃあ、キスでもしたら、からかってないって信じてくれるのか?」と低く静かな声を響かせた。

「俺は···、ずっと前から、麗月が好きだ。」