「だから、無理矢理取ったりはしてません!」
わたしがそう言うと、郁人さんは優しく「分かってますよ。」と言った。
「あ、あのぉ···、命さんは大丈夫ですか?」
わたしが小声で恐る恐るそう訊くと、郁人さんは「心配しなくても大丈夫ですよ。あいつは元気です。」と言った。
それを聞き、わたしは少しだけホッとした。
「まぁ、しばらくは自宅から出ないようには伝えてありますけどね。だから、俺たちはあいつの食料補充係です。」
郁人さんはそう言って、持っていた大きく膨らんだレジ袋を持ち上げて見せた。
「お二人は、大丈夫なんですか?こんなに普通に出歩いても。」
「俺等は全然平気ですよ。うちのバンドは、命のファンが大半なんで。」
そう言って「ははっ。」と笑う郁人さん。
すると芽衣さんは郁人さんの腕を掴み、「もう行こうよ。早く命に食料届けないと。」と言って、郁人さんを急かした。
「あぁ、そうだな。」
「今日は、命の好きなカレー作ってあげなきゃね〜!」
そう言いながら、わたしの方をチラッと見る芽衣さんは、明らかにマウントを取りたがっているように感じた。
「お前、そうは言うけど、作るのは俺だからな。」
「なっ!わたしだって手伝うし!」
「じゃあ、野菜くらいは切ってくれよ。」
「言われなくてもやりますー。」
そんな郁人さんと芽衣さんのやり取りを見て、(この二人って、確か双子なんだよね?)とふと思い出す。
(命くんも言ってたけど、確かに全然似てないなぁ···)
「それじゃ、俺等はそろそろ行きますね。」
そう言う郁人さんにわたしは「あ、はい。命さんに、よろしくお伝えください。」と言ったが、その横で「伝えるわけないでしょ!」と言い返してきた芽衣さんは、「べーっ!」と言いながら舌を出した。
「本当、お前は何歳だよ。恥ずかしいからやめてくれ。」
呆れた様子の郁人さんに注意されながら、歩き出す芽衣さん。
郁人さんはこちらを振り返り、軽く会釈してから芽衣さんと共に行ってしまった。
(とりあえず、命くんが元気だって分かって良かった。)
わたしはそう思いながら、命くんがわたしにくれた"ロック"を胸に抱き締めた。



