この恋に名前をつけるとするならば


(何してるんだろう?)

わたしはそう思いながら、アパートの階段を登った。

それから階段を登り切ったところで気付いたのだが、わたしの部屋の前で不審な動きをしていた人物は、白猫運輸の人だった。

(あれ?あの人······)

キャップ帽子の下から見えるサラサラヘアに、綺麗な顔立ちの横顔。
よく見てみると、その人はいつも職場に集荷に来てくれる蔵間さんだったのだ。

「あ、あのぉ···」

わたしがそう声を掛けると、蔵間さんはハッとした表情でこちらを向き、次の瞬間、片手を勢い良く前に突き出し「ストップ!」と言ったのだ。

「えっ?」
「あ、すいません!この辺にコンタクトを落としてしまって!」

蔵間さんの慌てように(あぁ、なるほど。)と納得したわたしは、その場にしゃがみ込み、一緒に蔵間さんのコンタクトレンズを探した。

辺りはすっかり暗くなり探しづらく、スマホのライトを当てて探してみたものの、結局コンタクトレンズは見つからなかった。

「いやぁ、参ったなぁ。やっぱり1Dayのにしとくんだったぁ···」

そう言って肩を落とす蔵間さん。

蔵間さんは顔を上げると、キャップ帽子を取り「一緒に探してくれて、ありがとうございました。」と深く頭を下げた。

「あ、いえいえ···、結局見つけられませんでしたから。すいません。」
「いえ!本当にありがとうございました!···というか、あのぉ、もしかしてなんですけど···、とり丸の事務員さんじゃないですか?」

顔を上げ、このタイミングでわたしに気付いた様子の蔵間さんの顔は、暗がりでも分かる程に美しく、イケメン慣れしていないわたしにはダメージが大き過ぎた。

「あ、はい···、気付きました?」
「はい。俺の事は、気付いてました?」
「はい···、蔵間さん、ですよね?」

わたしがそう訊くと、蔵間さんは「覚えててくれたんすね。」と言って、微笑んだ。
その微笑みが何とも眩しく、わたしには彼と目を合わせる勇気が出ない程だった。