この恋に名前をつけるとするならば


「やめて。」
「ん〜、どうしよっかなぁ。」
「そんなにわたしをからかって楽しいの?」
「別にからかってるつもりはないけど。」

雅はそう言うと、わたしの顔からパッと手を離し、今度はわたしの顎に手を添えた。

「麗月、もう少し男という生き物に危機感持った方がいいぞ。」
「き、危機感?」

わたしがそう訊くと、雅はゆっくりと瞬きをしてわたしを見つめながらこう言った。

「俺も"男"だって事、忘れないで。」

雅はそう言い終えると、スッと立ち上がり、両腕を上に伸ばして大きく伸びをした。

「んーーー!さて、シャワーでも浴びるか。麗月、タオル貸して。」
「えっ、あ、あぁ、うん。」

わたしは雅の言動に振り回されながらも平常心を保とうとしながら、普段使っていないバスタオルを用意し、雅に差し出した。

「さんきゅ!」

そう言って、バスタオルを肩に掛けながらバスルームに向かおうとする雅だったが、「あ、そうだ。」と言い、一度足を止めてこちらを振り向いた。

「さっきの男。」
「えっ?」
「あいつ···、彼氏?」
「あ、違う違う!全然、そういうのじゃなくて、」
「随分お洒落してるから、デートかと思ったけど。」
「いや、これは、普段着だから!」

わたしがそう言うと、雅は「ふーん」とどこか納得いかないような表情を浮かべていたが、「まぁ、いいや。」と呟き、バスルームへと入って行った。

(雅と一緒に居ると疲れる···、もう何なのよ···)

俺も"男"だって事、忘れないで――――

(それどういう意味?もう···雅が分からない。)

つい最近まで、職場と自宅の行き来だけだった、つまらなくも平穏だったわたしの生活に"命くん"という刺激がもたらされ、そこにまさかの雅の登場により、わたしの心は、更にかき乱されていくのだった。