「てか、うちに泊まるって、どこに寝るつもりなのよ。」
わたしが怒り口調でそう言うと、雅は即答で「麗月の隣でいいよ。」と言った。
「はあ?!お断り!」
「照れんなって。昔はよく一緒に寝てたじゃん。」
「昔って、いつの話してんのよ。」
「んー···、保育園?」
「昔過ぎるわ!」
わたしをからかいながら、楽しそうに笑う雅は相変わらずで、10年ぶりだという事を忘れてしまう。
雅はギタリストを目指し、高校を卒業すると共に海外へ留学してしまっていた為、それから会っていなかったのだ。
すると雅は「俺、しばらくここに泊まるから!」と言い、飲み終えた空のグラスをシンクに置いた。
「えっ?!」
「家が見つかるまでの間だけだから。」
「もう···、早く見つけてよね。」
わたしはからかわれた事にプンスカ怒りながら、ソファーの方へ歩いて行き、ドンッと雑に腰を下ろした。
わたしに続き、雅もわたしの隣に腰を掛けると、雅はソファーの背もたれに腕を置きながらわたしの方に身体を向けた。
「麗月さぁ······」
「な、なによ···」
「そこそこ綺麗になったな。」
「ちょっと、それは褒めてるの?」
「褒めてる褒めてる!」
雅の調子の良さにわたしが溜め息を吐くと、雅はわたしに顔を寄せ、片手でわたしの頬を挟むように掴んできた。
それからジーッとわたしの顔を見つめては、何かを企むような笑みを浮かべる。
「な、何なの?」
「いやぁ···、抵抗しないんだなって思って。」
「はっ?!」
「この顔の距離で男と女がする事って、決まってんじゃん?されてもいいんだぁ?」
そんな事を言われ、お腹の底から恥ずかしさが湧き上がってくるのを感じたわたしは、わたしの顔を掴む雅の腕を掴んだ。



