「もう突然来るからビックリしたよ。」
わたしはソファーで寛ぐ雅に呆れながらそう言うと、キッチンに立ち手を洗い始めた。
雅は昔から、いつも"突然"なのだ。
「久しぶりに俺に会えて嬉しい?」
「んー、まぁ、10年ぶりくらいだしね。」
「何だよ。普通に"嬉しい"って言ってくれてもいいじゃねーかよぉ。」
「はいはい、嬉しいですよぉ〜。」
そう言いながら手を洗い終えたわたしは、雅に「何か飲む?」と訊く。
「何あんの?」
「お茶か珈琲か、それから何あったかなぁ。」
そう言って、何があるか冷蔵庫の中を確認しようとした時、背後に気配を感じて、わたしは後ろを振り向いた。
すると、すぐ目の前には雅が立っていて、その瞬間、雅はわたしを包み込むように抱き締めた。
「会いたかった···――――」
耳元で響く程良い低音の雅の声。
わたしは一瞬、自分に何が起こったのか分からずに思考が停止してしまったが、我に返ると「わっ!ちょ、ちょっと!」と言い、慌てて雅の胸を押し返した。
「何すんのよ!!!」
わたしが照れ隠しをしながら怒ると、雅は両手を肩の高さに挙げ「あ、わりぃ、いつもの癖で。」とシラッとしながら言った。
「外国じゃ、ハグは普通だから。」
「ここは日本です!!!」
焦るわたしの様子に雅は「ヘヘッ」と笑うと、「照れた?」とわたしをからかっているようだった。
「べ、別に······」
わたしはそう言いながら、冷蔵庫を開けてお茶を取り出した。
(もう、雅ったら···何なのよぉ。)
グラスにお茶を注ぎ、それを雅に差し出すと、雅は「さんきゅー。」と言って受け取った瞬間にわたしが入れたお茶を一気に飲み干した。



