この恋に名前をつけるとするならば


「じゃあ、俺にもチャンスありますよね?」
「えっ?チャンス?」

命くんはニコニコしながら、Tシャツ姿だというのに腕捲くりをする仕草をして「さぁ!ガンガン焼きますよー!」と言うと、再びお肉を焼き始めた。

「麗月さん、飲み物足りてます?」
「あ、そろそろ新しいの頼もうかなぁ。」
「次、何にします?」
「んー、じゃあ、シークワーサーサワーにしてみようかな!」
「はいよ!」

優しくて気の利く命くんの姿に忘れかけていた淡い気持ちが思い起こされていくのを感じた。
もう立派な大人だというのに、まるで小学生の頃のようなくすぐったい恋心に近かった。

それからわたしたちは、食べて飲んで、語ったり笑ったり、楽しい時間を過ごした。

あまりの楽しさにわたしは羽目を外し過ぎてしまい、それほどお酒が強いわけでもないのに調子に乗って飲み過ぎてしまった。

帰りは真っ直ぐ歩けるような状態ではなかった為、恥ずかしながら命くんに背負われながら夜道を歩いた。

「大丈夫っすか?」
「ごめんね、ちょっと飲み過ぎちゃった。」
「無理させちゃいましたね···、気付かなくてすいません。」
「ううん。久しぶりに楽しくて、ついつい飲み過ぎちゃっただけだから。」
「楽しんでくれてたんですね。俺もめちゃくちゃ楽しかったです。」

命くんの男らしい大きな背中は温かくて、何だかとても心地が良かった。
胸はドキドキしているはずなのに、この不思議な気持ちはなんだろう。

「麗月さん。」
「ん?」
「また、俺とデートしてくれますか?」

背中に響く命くんの色気を感じる声。

すると、わたしの自宅アパートを目の前にした時···――――

「麗月?」

わたしの名前を呼ぶ声が聞こえ、わたしはふと正面を向いた。

「えっ······、雅(みやび)?」

暗がりの街灯の下でわたしの名前を呼び、アパートの前に立っていたのは、ホワイトベージュの髪色に派手な柄が入ったオーバーサイズの白いスウェットを着て、ギターケースを担いだ幼馴染の花房雅(はなぶさ みやび)だった。