「今度、練習も見に来てくださいよ!」
蔵間さんはそう誘ってくれたが、わたしの気はあまり進まなかった。
「でも···、わたしが行くと、ご迷惑かけてしまいますし。」
「えっ!全然迷惑なんかじゃないですよ!」
「んー、でもぉ······」
わたしが戸惑っていると、その様子を見た蔵間さんは「もしかして、芽衣の事、気にしてます?」と言った。
「わたし、何か嫌われちゃってるみたいですし。わたしが行く事で嫌な思いをさせたくないです。」
わたしがそう言うと、蔵間さんは少し寂しそうな表情を浮かべ、それから「凪原さんって、優しいっすね。」と言った。
「あ、じゃあ!今度二人で飯行きません?それなら芽衣も居ないし!」
「えっ!ご飯ですか?!」
「飯もダメですか?」
「あ、いや、ダメでは、ない、ですけど······」
わたしがハッキリしない返事をすると、蔵間さんはわたしの顔を覗き込み、「俺、凪原さんの事、もっと知りたいです。」と言った。
その言葉にもうわたしの心は破裂寸前になっていた。
(蔵間さんと話してると、心臓が何個あっても足りないかも······)
「あ、そうそう!俺の眼鏡姿どうですか?」
「あぁ、眼鏡似合いますね。」
「本当っすか?!それなら、この際だから眼鏡のままで居ようかなぁ。」
そう言って腕を組み考え込む蔵間さんは、ふとこちらを向くと「それか、眼鏡は凪原さんの前だけにしよっかな。」と言い、ニカッと笑って見せた。
(だーかーらー!その顔、反則だってー!)
「凪原さんは、毎日眼鏡なんすね。」
「えっ?あ、はい、まぁ。」
「じゃあ今度、二人の時に眼鏡外した素顔、見せてくれます?」
蔵間さんから次々と出て来る、わたしにはダメージが大き過ぎる言葉は、何故かいやらしくはなくて、単に素直な気持ちを口に出しているだけなんだと感じさせた。
だから、心が拒否する事なく、スッと入り込んでくる。
蔵間さんは、不思議な人だ。



