この恋に名前をつけるとするならば



「どうも〜、白猫運輸でーす!」

午後の集荷にやって来た白猫がトレードマークのキャップ帽子を被る白猫運輸のお兄さん。
深く被るキャップ帽子の下からはサラサラの黒髪に、くっきり二重の澄んだ瞳が見え隠れする。

仕事着の胸に下がる名札には"蔵間(くらま)"と書かれていた。

「今日は無しです。」

わたしがそう答えると、白猫運輸の蔵間さんは「分かりました、またお願いしまーす!」とキャップ帽子のツバに掴み、爽やかに帰って行った。


わたしは、凪原麗月(なぎはら りつき)。北海道生まれの29歳。
高卒のわたしは22歳まで地元の北海道札幌市で暮らしていたが、小さい頃から都会暮らしに憧れていたわたしは、高卒後に必死に働いて溜めた貯金を握り締め、一人上京して来た。

あれから7年。今は焼鳥テイクアウト専門店"とり丸"のこの小さな第二支店で事務員として働きながら、築年数そこそこのアパートでひっそりと一人暮らしをしている。

当時憧れていたキラキラした都会生活とはかけ離れており、何の代わり映えもしない日常が過ぎて行くだけだが、これが身の丈に合った生活なんだと自分に言い聞かせていた。

(来週は忙しくなりそうだから、今日はゆっくり仕事しよう。)

そう考えながら、わたしはA地区エリアの営業さんたちのスケジュールをパソコンに打ち込んで行く。

このこじんまりとした第二支店には、事務員はわたし一人しか居ない。
丁度一年前までは先輩の事務員が一人居たのだが、二人目のお子さんの妊娠をきっかけに退職してしまったのだ。

普段、営業さんたちは店舗スタッフとして各担当店舗で業務を行なっている為、この第二支店に来る事はほとんどない。
来る事があるとすれば、本社とのテレビ会議がある時くらいだ。

だからわたしは毎日、この第二支店に一人で出勤し、一人で業務をこなし、一人で退勤、戸締まりをして帰宅しているのだ。