【完結】Blackberry

side一ノ瀬燐牙

その夜、梨紗と一緒にベッドで眠っていた。
彼女は温かくて、柔らかい。
猫毛な髪を俺は無意識に撫でつつ、彼女の耳にキスを落とした。

「んん…」

彼女はほぼほぼ夢の中に入りかけており、俺の初エッチはまだまだ遠そうだ。

「梨紗、好きだよ…」

俺は彼女の耳にそう囁いた。

そして、彼女の腹部に手を回して眠りにつこうとした時…

電話が鳴り響いた。

梨紗を起こさないように、ツーコールで出たが、彼女は起きてしまった。

「どうした?」

相手は兵藤だった。

『資金源の移送車が海勝会に襲われました。
幸いにも、資金源は無事ですが。
奴らは的確にこちらの位置を掴んでいます。』

「分かった。
資金源を安全な位置に移動させてくれ。
ご苦労だったな、兵藤。」

そして、俺は黒のスーツに腕を通した。

「…行くの?」

不安気な表情で梨紗が俺を見つめる。

「すぐ戻るよ。」

俺は梨紗の顎を持ち上げて、彼女の唇に軽くキスをした。

「もうっ…!」

「嫌なの?」

「そんなの…
分かってるくせにっ!」

「ふん…
行ってくる…」

俺は彼女の僅かに笑った顔を見ると、出かけた。

その夜に、鬼千会の幹部会が開かれた。

議題は、《《亜美》》について、だ。

「殺しましょう!」

「いや、生かして情報を吐かせるべきじゃないか?」

「女だからと容赦できねぇ!」

色々な意見が飛び交う中、俺の心情はもちろん複雑だった。
一度は身体を許した仲だ。
殺すとしても、苦しめたくは無かった。

甘いと言われればそうかもしれないが…

「みんな、俺に任せてくれないか?
俺の出した埃だ。
後始末は俺がする。」

俺はそう言った。

「燐牙がそう言うなら、任せとけ…」

会長が一言そう言い、その日の幹部会は資金源の移送終了を報告して終わった。

「燐牙さん、どうするんですか…?」

「亜美の事か?」

「えぇ。
あなたにとっては辛い決断かと。」

「それでも決めなきゃならない時はあるさ…」

俺は亜美を消す事を決めていた。

♦︎♦︎♦︎

次の日、高級ブティックで買い物中の亜美は撃たれて死んだ…

遺体は海勝会が引き取らなかったために俺が引き取った。

「亜美、お前も被害者だよな。
悪かった。
地獄で会ったら、酒でも飲もうや。
俺もいずれはそっちに行くからよ…」

俺はそう言って彼女に手を合わせた。

それが、俺なりの…最後の情だった…

さぁ、最後の戦いが始まる。

最後に笑うのは、鬼千会か海勝会か?
神のみぞ知るって奴か。
ふん…

俺はかすかに自嘲して、灰色に染まった真冬の空の下を歩いた。

負けられない…
梨紗の為にも…

そして…



殺してしまった、亜美の為にも…