【完結】Blackberry

side 一ノ瀬燐牙

暗闇になじんだ鉄の匂い。
恐怖の臭い。
梨紗の震える呼吸。
全部――ここにある。

「そこから一歩でも動いたら、撃つぞ!」

準幹部が叫ぶ。
だが手が震えているのは丸分かりだ。

俺はゆっくり歩きながら、低く言った。

「……その手。
早く離せよ。」

銃声が鳴った。

だが、当たらない。
避けたんじゃない。
撃つ前に、その腕を折った。

骨の砕ける音が響く。

周りが一斉に襲いかかってきたが――
もはや相手にならなかった。

殴り飛ばし、蹴り砕き、壁に叩きつける。
近づく奴は全員まとめて床に沈めた。

梨紗の横で木本が震えながら叫んだ。

「こ、来るな!
来たら、この女――!」

俺と梨紗の視線が一瞬だけ重なる。
涙で濡れた瞳。
必死に堪えてた。

だから言った。

「殺せるわけねぇだろ、お前に。」

その瞬間。

背後からもう一人の影が木本を羽交い絞めにした。

「遅れてすみません、若頭。」

兵藤だった。
血だらけで、ボロボロで、それでも笑ってた。

木本の腕から銃が落ちた。

俺は梨紗に駆け寄り、縄を解いた。

「……悪かった。」

その一言で、梨紗は堰を切ったように泣き出した。

胸に飛び込んできた身体を、俺は静かに受け止める。

「怖かった…っ
一ノ瀬さん…
怖かったよ……!」

「分かってる。
もう大丈夫だ。」

震える背中を、何度も何度も撫でた。

二度と、
二度と離すもんか。

そうして、木本らは全員射殺し、分裂抗争は終わりを告げた。