私の乗った車は埼玉に向かっていた。
「これから向かうのは秩父温泉の近くの秩父山脈が見える別邸です。
きっと、梨紗さんも気に入りますよ。」
兵藤さんがそう言って話しかけてくれるが、私の心はどこか上の空だった。
私が居なくなったら…
寝起きの悪い一ノ瀬さんを誰が起こすのか?とか、一ノ瀬さんはタバコばっかり吸わないで栄養のある物をちゃんと食べるだろうか?とか、そんなしょうもない心配事ばかりが頭をよぎった。
そんな事を私が心配しても仕方ないし、きっと何とかなるものなんだろうけれど…
『あぁ。女が居ても邪魔なんだ。』
その言葉だけが私の心に漬け物石のように重くのしかかった。
そうよね、私が居たって…
私はだからこそ、おとなしくこの地にやって来たのだ。
秩父温泉は観光地でもあり、中国や韓国、アジアの観光客で溢れかえっていた。
私たちの車はそのそばを通り、小山のふもとの屋敷に向かった。
「山をバックにしているので、背後からの奇襲は考えにくい。
良い場所ですよ。」
兵藤さんがまたそう言った。
「そうですね…」
私はそれだけ答えた。
趣のある屋敷に入ると数匹の子猫が出迎えた。
「あぁ、ここを任せている大家が猫好きなんですよ。
親猫が死んだと思ったら、こんな遺産があったのか…」
辟易として言う兵藤さんを傍に、私は子猫に夢中になった。
猫はミャーミャーと私に戯れよってくる。
私は毛糸で遊んであげたり、チュールをあげたりした。
「梨紗さんは動物に好かれるようですね。」
兵藤さんは苦笑いしてそう言った。
一ノ瀬さんが居ない寂しさを子猫が少しだけ癒してくれた。
「この屋敷は秩父温泉の水脈から温泉が沸いていますから、疲れを取るにはすごくいいですよ。
いつでも沸いていますから、気兼ねなく入ってください。」
兵藤さんが言い、屋敷の周りの護衛を固めるために部下と話し合いに向かった。
私は部屋のカーテンを開けて、陽の当たる場所で子猫と戯れた。
そして、それから数日間読書したり、子猫と遊んだり、温泉に入ったりした。
夜になると一ノ瀬さんから携帯に電話が掛かってくる。
「何してた?」
「飯…ちゃんと食ってるのか?」
「眠れてるのか?」
「声が聞きたかった…」
そんな一ノ瀬さんの声は携帯越しでも優しさに溢れていて、私は余計に彼の温かさが恋しくなってしまった。
「一ノ瀬さん…こそ、朝、ちゃんと起きれてる…?」
私が尋ねると、彼は笑ってこう答えた。
「起きれねぇから、今から来てくれ。」
「行きたい…」
「あぁ、俺もだよ…」
まさに、私たちは織姫と彦星状態だった。
「これから向かうのは秩父温泉の近くの秩父山脈が見える別邸です。
きっと、梨紗さんも気に入りますよ。」
兵藤さんがそう言って話しかけてくれるが、私の心はどこか上の空だった。
私が居なくなったら…
寝起きの悪い一ノ瀬さんを誰が起こすのか?とか、一ノ瀬さんはタバコばっかり吸わないで栄養のある物をちゃんと食べるだろうか?とか、そんなしょうもない心配事ばかりが頭をよぎった。
そんな事を私が心配しても仕方ないし、きっと何とかなるものなんだろうけれど…
『あぁ。女が居ても邪魔なんだ。』
その言葉だけが私の心に漬け物石のように重くのしかかった。
そうよね、私が居たって…
私はだからこそ、おとなしくこの地にやって来たのだ。
秩父温泉は観光地でもあり、中国や韓国、アジアの観光客で溢れかえっていた。
私たちの車はそのそばを通り、小山のふもとの屋敷に向かった。
「山をバックにしているので、背後からの奇襲は考えにくい。
良い場所ですよ。」
兵藤さんがまたそう言った。
「そうですね…」
私はそれだけ答えた。
趣のある屋敷に入ると数匹の子猫が出迎えた。
「あぁ、ここを任せている大家が猫好きなんですよ。
親猫が死んだと思ったら、こんな遺産があったのか…」
辟易として言う兵藤さんを傍に、私は子猫に夢中になった。
猫はミャーミャーと私に戯れよってくる。
私は毛糸で遊んであげたり、チュールをあげたりした。
「梨紗さんは動物に好かれるようですね。」
兵藤さんは苦笑いしてそう言った。
一ノ瀬さんが居ない寂しさを子猫が少しだけ癒してくれた。
「この屋敷は秩父温泉の水脈から温泉が沸いていますから、疲れを取るにはすごくいいですよ。
いつでも沸いていますから、気兼ねなく入ってください。」
兵藤さんが言い、屋敷の周りの護衛を固めるために部下と話し合いに向かった。
私は部屋のカーテンを開けて、陽の当たる場所で子猫と戯れた。
そして、それから数日間読書したり、子猫と遊んだり、温泉に入ったりした。
夜になると一ノ瀬さんから携帯に電話が掛かってくる。
「何してた?」
「飯…ちゃんと食ってるのか?」
「眠れてるのか?」
「声が聞きたかった…」
そんな一ノ瀬さんの声は携帯越しでも優しさに溢れていて、私は余計に彼の温かさが恋しくなってしまった。
「一ノ瀬さん…こそ、朝、ちゃんと起きれてる…?」
私が尋ねると、彼は笑ってこう答えた。
「起きれねぇから、今から来てくれ。」
「行きたい…」
「あぁ、俺もだよ…」
まさに、私たちは織姫と彦星状態だった。



