【完結】Blackberry

私は悪戦苦闘しながらも、なんとか一ノ瀬さんの真似をして食事をして行った。

そんな中、一ノ瀬さんは水口社長に切り出す。

「水口社長、いつもながらのブツの資金洗浄ありがとうございます。」

「いえいえ、私どもも関連企業になる以上はそういう事もわきまえていますから。
それよりも、今回の株主総会よろしくお願いします。」

「もちろんですよ。
持ちつ持たれつが俺たちの世界の常識だ。
ギブアンドテイクとも言いますがね。」

水口社長と一ノ瀬さんは笑い合った。
それは、黒くて純粋な笑いにも聞こえた。

「それで…
昼食会を設けたのは、大事な話があるからでは?」

水口社長が言った。

「ハハっ…
お察しの通りです。

実は最近逆盃を受けましてね。
6人も同時にです。
奴らは準幹部でもありました。

もうお分かりかと思いますが…」

「なるほど…
分裂抗争が勃発したと…」

「ご明察です。」

「それで、私にしてほしい事とは?」

「話が早くて助かる。
実は、分裂した木本達は今現在、資金調達に奔走しているようなのですよ。
それで…
水口さんの人脈をもって、出来るだけ資金源を遮断してほしいのです。」

一ノ瀬さんはフォアグラを食べてそう説明した。

「なるほど…
しかし、危険な橋でもありますね。
もしも、向こうが私が手を下したと分かったら、私も睨まれる危険性もある。」

「もちろん、ただでとは言いませんし、護衛も出します。
いかがでしょうか?」

「ふむ…
まぁ、一ノ瀬さんの頼みだ。
やれる所までやってみましょう。」

そう言って水口さんは赤ワインをゆっくりと飲んだ。

その日の昼食会はそれで終わった。

「あぁ、月城さん。」

私は水口さんに呼び止められた。

「はい…」

「一ノ瀬さんがあんなに優しそうな表情をするのを初めてみましたよ。」

「えっ…?」

「気付きませんでしたか?
一ノ瀬さんがあなたを気遣ってゆっくり目に食べていたのを?」

「え…」

「ははは!
一ノ瀬さんも苦労しそうだ!
しかしね、今となっては少なくなったが、ヤクザというものは、本来優しさや情というものが無ければならない。
私はそう思うのですよ。
だから、今日の一ノ瀬さんを見て、正直嬉しかったのです。
ヤクザとして一回り大きくなった彼を見て、ね。
これからも、一ノ瀬さんをよろしくお願いしますね。」

そして、水口さんはリムジンに乗って去って行った。

こうして、昼食会は無事に終わった訳である。

「ね、ねぇ…?」

「あ?」

「私のこと気遣ってゆっくり食べてくれたの?」

「…分かってんのかよ…」

彼は照れくさそうにそれしか答えなかった。