季節は秋。

恋愛が禁物のこの世界。

楽しみと言えば各藩から定期的に届く美食、家光宛ての送り物ぐらいである。

『今日の餞別は薩摩藩からのお芋の蒸かしですよ~。』

艶はこの瞬間が嫌い。

飢えた野良犬のように食料に群がる仲間たちを

この一時だけ嫌う。

『・・・あのー。』

その声に艶が振り返る。

すると、台所の入口付近で艶と同じ年くらいの18・9歳くらいの少年が

着物をきた野良犬たちを見て苦笑を浮かべている。