「な、なんと小日向・矢野ペア、お姫様抱っこでゴールです!」
放送委員のそんな実況が聞こえたが、俺はそのまま救護室に連れて行った。
パイプ椅子の上に座らせると、すぐに養護の先生と保健委員の生徒が矢野さんの手当をしてくれる。
「矢野さん、本当にごめん」
「いや、いいけど……さっきのは」
「あれだと失格だよな! でもあのまま走るのはキツイと思ってさ!」
「……そういうことじゃないと思うんだけど」
矢野さんは俺から顔を背けた。
その顔はほんのり赤く染まっているような気がした。
「それじゃ、俺は先に戻るな。次の出番があるからさ」
「う、うん」
「矢野さんはゆっくり戻ってきていいから!」
「あ、あの! 小日向!」
「うん?」
「あ、ありがと……」
ちっちゃい声で照れくさそうに、でも俺にはちゃんと聞こえた。
「おう!」
矢野さんは普段からしっかり者だしちょっとツンツンしてるところもあるけど、照れ屋なところもあるんだな。
やっぱりかわいいじゃん、と思いながら俺は次の出番へと向かった。
『……やっぱり晴真、ワルいやつだなぁ』
ボソッとつぶやいた雷斗の言葉は聞こえていなかった。



