「………………え?」
"今夜" "泊めて"
全く予想外の言葉に暫くフリーズする。
「な、なんで。やだ。」
動揺してる中で何か言わなくては、と思ってでたのはそんな言葉。
ザ・チャラ男の京なんかを家に泊めたら何事もなく、なんて風にいくわけがない。
私が京をいなせたとしても面倒に変わりは無い。
私は久々の仕事で眠いんだ。
疲れてるからさっさと帰ってベッドに潜りたい。
…疲れてなくても、京の夜の相手なんてまっぴらごめんだが。
それに、私は家に人を上げたくない。
今までも、他の人を家に入れたことなんか無かった。
「どうしても駄目?」
京は捨てられた子犬みたいな顔で言う。
その顔に何も思わなかったわけじゃないが、その感情をぐっと押し込めて冷たく突き放す。
「なんで私なの。他にいっぱいいるでしょ。京を泊めてくれる女なんて」
こんな組織に属している限り、家族関係が円満な訳が無いので、「自分の家は?」なんてことは聞かないが、それにしたってこの顔だ。受け入れてくれるところなんて引くて数多だろう。
それを言うと、京はぐっと言葉を詰まらせた。
「いや、そう…だけど……そうじゃないっていうか……」
「……なに?私をからかいたいだけならさっさと帰るから、手離して。」
「違う!」
腕を握る力が強くなる。
こんなに必死な京は初めて見たので、戸惑ってしまう。
本気なのか……?
「本当に頼むよ…。俺、酔ちゃんの嫌がることなにもしないって誓う。」
そう言った顔が疲れきっていて、私は動揺する。
いつもヘラヘラと薄っぺらい笑みを浮かべてる京の、見てはいけないところを見てしまったような気がした。
京は私に縋るみたいに、腕を強く握っている。
……痣になりそうなくらい、強く。
「…………」
どうやら、夜の相手を求めている訳じゃないらしいことは分かった。
暫く沈黙し、その疲れきっている顔をじっと見ながら逡巡する。
それからとうとう根負けして、短く告げた。
「……寝るだけだからね。」
それを聞いて、京の顔がふっ、と力が抜けたように緩んだ。
「ありがとう」
初めて見るその自然な笑顔に目を奪われる。
「…っ」
邪気がなくて、なんだか幼い笑顔。
でもその顔の中には、寂しさや諦めがある気がして、目を逸らす。
「なんか変だよ……今日のあんた。調子狂う……」
そう言うと、京は眉を下げて笑った。
