京は学校の鞄をベッドに立てかけ、外したネクタイをその上に無造作に置いた。
「酔ちゃん、もう夜ご飯食べた?」
「食べてない」
「何か作ろうか?」
「うん。冷蔵庫に適当に買ってきた野菜あるから、それ使って」
「は〜い」
何度か泊めるうちに分かったことだが、京は料理がとても上手い。
初めて京が作ってくれた朝ごはんを食べた時は、衝撃を受けた。
それまでうちの冷蔵庫はほとんど空だったが、それ以来、京が家に来る日は、事前にスーパーに寄って食材を買うようになった。
ちなみに、私はごくたまにしか自炊をしない。
理由は単純で、洗い物が増えるから。
一人暮らしを始めた頃は、それなりに自炊していたが、最近はずっとコンビニ弁当や栄養ゼリーで済ませていた。
昼は学食を食べているし、栄養面はたぶん問題ない、と思っている。
京がキッチンに立ってしばらくすると、部屋にいい匂いが漂ってきた。
課題を切り上げて、ローテーブルの上を片付ける。
……このペットボトル、中身入ってる。
いつのだろう。
捨てよう。
そう思って一旦床に置き、研ぎかけのナイフをベッドの上に移動する。
ご飯を置くスペースを確保できたところで、京がひょこっと顔を出した。
「ご飯できたよー。置ける場所ある?」
「今つくった」
「おっけー」
京が部屋の片付けを手伝ってくれるようになってから、京が来て三日くらいは、足の踏み場に困らずに済むようになった。
けれど、もともと狭い部屋だ。
物が少し増えるだけで、あっという間に床が埋まる。
一週間も経つと、部屋は元通りになってしまう。
そのたびに、京は呆れた顔をしながらも、また一緒に片付けてくれた。
