その日の夜、フードが着いた真っ黒のコートを着て、夜の歓楽街に出る。
昼は眠り、夜に活動する歓楽街には、相変わらずたくさんの人がいる。
客を勧誘してるキャバ嬢、ナンパされて愛想笑いを浮かべる女の子、路肩で蹲って泣いているホス狂、通行人に難癖つける酔っ払い。
罵声や嬌声が至る所から聞こえてくる。
酒と香水と煙草の匂いが混ざった空気を肺に取り込んで、吐き捨てた。
「おねーさん可愛いねー?今夜俺とどう?」
「おい!待て、お前。お前がぶつかったせいで俺の服に塵がついたじゃねぇか。弁償しやがれ」
自信ありげに声をかけてくるナンパや、わざとぶつかってくる当たり屋を適当にあしらいつつ、大通りを歩き続けること数分。
目的地の居酒屋に辿り着く。
スマホで時間を確認すると、22時25分。決めた時間の5分前だった。
待ち合わせをしている人物がまだいないので、店の前で待つ。
待ってる間、ナンパが絶えなかったのでフードを被った。
集合時間から2分過ぎた22時32分。
フードを被ったのにも関わらずナンパされていた私の元に1人の男がやってきた。
「ごめーん、遅れたー。おっさーん、この子俺の連れだから。ほら、行った行った。」
私の肩を組み、しっしっ、と手を振ってナンパを追い払う。
おじさんがバツが悪そうに消えていくのを薄目で眺めた。
