闇底の純愛





京と別れて、いつもの通学路を歩いていき、学校に着く。


最終登校時間の5分前。

人が一番多い時間帯なので騒がしい。


席につき、鞄から本を取り出す。
ボスから借りた、人体の構造についての本。

表紙の端に、うっすら血が滲んでるので、簡素なカバーをしている。



やがてチャイムが鳴り、すぐに授業が始まる。

先生の話を聞きながらノートをとり、当てられたら答える。


そんなふうに淡々と過ごしていると、時間はあっという間に過ぎていく。





「あのっ!!」


昼休み。


学食へ向かう途中の廊下で、声をかけられた。

立ち止まって振り向くと、男子生徒が一人立っている。
見たことない顔だったので、クラスメイトでは無さそうだ。


なんの用かと思い、じっとその人の顔を見る。


「……えっと」
口を開いて、すぐ閉じる。

私が何も言わずに見ていると、視線が泳ぎ始めた。


ただならぬ気配に、だんだん周囲の空気がざわつき始める。


「す、好きです…」

「そう」


「……」


沈黙。



秒針が進むたび、彼の表情が少しずつ曇っていく。


「その……」


言葉が続かない。

肩が強張り、指先が落ち着きなく動く。



やがて、彼の視線が床に落ちた。


「あ、あの、ごめんなさい……変なこと言って。……やっぱり、なんでもないです……」


絞り出すようにそう言って、踵を返す。

そして、足早に遠ざかっていった。



私は踵を返し、食堂に向かって再び歩き出した。