闇底の純愛




酔ちゃんはいつも無表情で、淡々としていて、感情の起伏が全然見えない。

そのせいもあり、学校では高嶺の花と呼ばれている。


透き通るように白い肌。
長い睫毛で縁取られた瞳、潤んだ唇、小さな鼻が、完璧な配置で並んでいる顔。

人生で、染めたことなんて一度もなさそうな、腰までの長い黒髪。


人とは必要最低限しか話さず、特別に絡んでいる人も居ない。

高校入学当初は告られまくっていたが、誰一人として成功することが無かった。

今では皆、遠巻きに眺めるだけになっている。


人形みたいに整った顔で、銃を構える時も、誰かを亡きものにする時も、顔色一つ変えない。



だから正直、私生活なんて想像もつかなかった。


それが、こんなにも人間味に溢れてるなんて。

がさぁ…と音を立てて崩れた教科書とプリントのタワーを、苦笑しながら積み直す。


洗濯物を畳みながら、ふと浴室の方を見た。

ドアの向こうから、水の音が微かに聞こえる。

今日だけで、知らなかった酔ちゃんをいくつ見ただろう。

驚いた顔。
疲れた顔。
怒った顔。
露骨に嫌そうな顔。

それから、生活してる部屋。

どれも、とても人間味のあるものだった。



そんなことを考えてるうちに、洗濯物をすべて畳み終えた。

ふう、と小さく息を吐く。
ぼーっとしていると、だんだん瞼が重くなってきた。


……眠い。


この部屋にいると、どうにも気が抜ける。
張りつめていたものが、ゆるゆるとほどけていく感じ。


期待されないし、取り繕わなくていい空間だからかもしれない。



ドア越しに、ドライヤーの音が聞こえた。

……酔ちゃん、お風呂から出たんだ。



眠気に抗えなくて、ベッドに上半身を預ける。




おかしいな、俺、寝るのにすごく時間がかかるはずなのに…



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