side:狼谷 京
酔ちゃんが行ってしまって、俺はこの部屋に一人残された。
改めて、部屋をぐるりと見回す。
絶妙なバランスで積み上げられた教科書やプリントが、今にも雪崩を起こしそうだった。
口が開いたままのスナック菓子の袋。きっと中身は湿気っているだろう。
そんな中で、ぽつんと置かれた拳銃だけが、酷く異質に思えた。
見慣れているはずの拳銃が異質に見えるのは、この部屋が、あまりにも生活感に満ちているからだろう。
今まで転々としてきた女の部屋とはまるで違う。
香水やインテリアで飾らない素の部屋は、なんだか息がしやすい気がした。
さっき、酔ちゃんはベッドの上に、俺が座れるスペースを作ってくれた。
片付けたというより、物をガサッと端に寄せた、無理やりつくったスペース。
それを見て苦笑しながらも、俺は、ベッドの上に座っていいと言われたことに、少し驚いた。
ベッドなんていう、いちばんプライベートな場所に、人をあげられるんだ、と思って。
そこで洗濯物の山が目に入り、畳めと言われていたことを思い出す。
手を伸ばして黙々と畳んでいく。
今日は、酔ちゃんの新しいところを、たくさん見た気がする。
相棒になってから半年が経とうとしているが、いまだに俺は、酔ちゃんのことを掴みきれていなかった。
それなりに、一緒に修羅場もくぐってきたはずなのに。
