初恋の君は、闇を抱く。


そう言って、私の手首に一瞬だけ視線を落とす。

さっき掴まれていたところ……強く掴まれて痛かった。


「……跡、残ってねぇ?」

「あ……大丈夫です」


慌てて答えると、イブはほっとしたように息を吐いた。


「そっか。ならよかった」


その距離が、少しだけ近い。

夜風に混じって、かすかに煙草の匂いがした。

嫌じゃない、不思議な匂い。


「気を付けろよ、ゼロ番。可愛い顔してると、変なの寄ってくるから」


冗談めかした口調なのに、目だけは真剣だった。

この目、やっぱり知ってる。


でも……確信は持てず。



「……はい」


それしか、言えなかった。


「じゃ、もう遅せーし、大人数でいろよ」


そう言ってイブは軽く手を振った。


頭を下げ、私がミオの方に向かって歩こうとした時……


背後で、誰かが息を吸う気配がした。


「……」


呼ばれそうな気がして、思わず足を止めかける。


でもーーー


結局名前は呼ばれなかった。