「ねぇ、凪。イブって知ってる?」
目の前にあった空き缶を蹴りながら、友達のミオが聞いてきた。
「……イブ?」
聞き返すと、ミオは少しだけ声を潜める。
「ここのリーダー的存在だったらしいんだけどね、急に消えてしばらく来なくなってたみたいで。でも最近またここに来てるんだって!夜だけ現れるって噂の人」
ゼロ番交差点。
通称ゼロ番では、噂話が一番の娯楽だ。
輪になって座り、笑い合っている子たちもいれば、1人道路の縁に座ってスマホをいじる子、大きいぬいぐるみを枕にして寝ている子もいる。
誰かの煙草の匂いが、夜風に混じった。
ここには〝自由〟がある。
誰も叱らないし深入りしてこない。
それが当たり前の日常。
「イブってどんな人?」
そう聞くとミオは首をかしげ、少し考えてから言った。
「んー、一言で言うと超有名人!喧嘩も強いし顔もやばいらしい」
……なんだそれ。
「やばいって?」
「超絶イケメンてことじゃない!?みんな騒いでたし。先週の金曜に来てたらしいんだけどさ……私も見たかったなぁ」



