初恋の君は、闇を抱く。


余計なこと言っちゃったかな……。

「ご、ごめ……」


謝ろうとしたのと同時に、

「名前!あだ名でもなんでもいいけど。聞いてなかったな」

と明るく言われた。

「あ、言ってなかったもんね……〝凪〟って呼んで?」


名乗った瞬間、空気がほんの一拍だけ止まった気がした。

イブは何も言わない。

でも、視線だけが逸れたまま、息を整えるみたいに深く息を吸う。


「凪……か」


その呼び方が、なぜか初めてじゃないみたいに聞こえた。


「珍しい名前だな」

「……よく言われる」

「そう」


それ以上、何も続かなかった。

でも隣にいる彼の存在だけが、やけに近くに感じる。


「……俺さ」

「え?」

何かを言いかけて、「なんでもない」と途中でやめた。

その横顔が、
なぜか少しだけ苦しそうに見えた。

知らない人のはずなのに。

どうしても懐かしい感情が頭から離れない。

でも……あの子だったら名前を言ったら気付くよね?

何も言わないってことは、やっぱり別人なはず。