初恋の君は、闇を抱く。


同じ方向――
さっきあの子が消えて行った道を見る。


「……久しぶりじゃん」


その一言に、胸がひくりと跳ねた。

「何が」

「さっきの……誰なの?」

俺が答える前に紗夜の視線が俺の腕に落ちる。

パーカーの袖が少しずれて、そこから覗いた黒い刺青。

〝aoi〟

紗夜は一瞬だけ目を細めて、すぐに口元を歪めた。


「まだ……消してないんだ」

「消せるわけねぇだろ」

「それがある限りさ……あんた前に進めないよ」


空気が冷える。


「うるせぇな、ほっとけよ」

「ふーん、相変わらずだね」

紗夜はため息をついて夜空を見上げた。

「さっきの子、気になるの?」

「違う」

即答だった。

「即答すぎ!逆に怪しい」


からかうように言いながらも、紗夜の声はどこか慎重だった。


「〝aoi〟の名前入れたくせに、他の女見てあんな顔するとかさ。初めて見た」


「顔、してねぇ」

「してたよ。懐かしいもの見つけた時みたいな」