桐生くんには敵いません!

 中庭の吹き抜けから、校庭が見えた。

「今日暑かったでしょ。オレら、一試合終わった後この渡り廊下で涼んでてさ。こっからだと女子の体育も見えてたんだ」

 うっ、モタモタ私が走ってるの梶くんたちに見られてないかな。

「來人もオレも座り込んで、もたれて水飲んでたんだけどさ。同じように休んでる四組の男子の声が聞こえてて」

 そう言ったまましばらく黙ってしまった梶くん。
 何か言いづらいことでもあったのかな?
 私とさあちゃんの顔を見比べていた梶くんが、決心したようにまたゆっくりと口を開く。

「『水谷さん、今日もキレイだなあ』って何人かの声が聞こえてきたんだ。まあ、いつものことだけど」
「チッ、勝手に人のこと見とるんか! しばくぞ」

 梶くんは毒づくさあちゃんに苦笑いしたまま話を続ける。

「その中にアイツがいてさ」

 チラッと私を見る梶くんの視線で、それが誰かわかった気がして校庭の方を見た。
 練習中の陸上部の中に背の高い男の子の姿がある。

「アイツって誰やねん、梶」
「えっと……どら焼き王子?」
「いや、麻木くんね」

 名前覚えようよと口を挟んだ私を二人が悲しそうな顔で見ている。