桐生くんには敵いません!


 梶くんに情報を聞こうと思うのに、見当たらない。
 桐生くんと一緒にいるんだろうか。
 ざわついている教室にホームルームのため担任の後藤先生が入ってきた。
 その後ろから梶くんも一緒に入ってきたけど、やはり桐生くんの姿はない。
 梶くんと目が合うと「後で」と口元だけを動かして、私やさあちゃんを安心させるためにだろう、少しだけ笑ってくれた。

「今日の男子体育の授業中、競技と関係ない待機時間にうちのクラスの桐生來人くんが四組の男子と私的な揉め事があったようです。相手からの訴えがあったため、当人たちに事情を聴いております。が、いかなる場合の暴力も本学園では許しておりません。よって桐生來人くんは二日間の自宅謹慎となりました。皆さんも気を付けてくださいね」

 教室に女子の落胆したような悲痛な声が飛び交う。
 桐生くんが二日間の自宅謹慎? 今日が水曜日だから木曜・金曜自宅謹慎で、来週じゃないと学校に来られないってこと?
 さようなら、また明日の号令も耳に入ってこず、何があったのかを考えていた。

「望月さん、ちょっといい? 水谷さんも」

 ここでは聞かれたくない話なのか、帰り支度をし梶くんについて行く。
 いつもの校庭ではなく体育館に向かう渡り廊下にある中庭。
 ここなら部活動で騒がしい体育館の音や音楽室も近いから吹奏楽部の音も聞こえて賑やかで、私たちの声も誰かに聞かれそうにない。