その日の昼休み、桐生くんは校庭に現れなかった。
どうやら学食に行ったらしく、心配した梶くんもそれに付き合うからと私たちに伝えに来てくれたので、今日のおやつに持ってきた水ようかんを二つ手渡す。
「桐生くんが食べないなら、梶くんが食べちゃっていいから」
「なんとか今日中に來人の機嫌直させるからさ。また四人でランチしたいし」
「うちは、福と梶だけでええんやで」
「まあまあ、水谷さんだってそう言いながら本当は心配してるでしょ」
「してへんわ!」
ふんっと鼻息を荒くしたさあちゃんだけど、私は知っている。
普段教室の中では私たち以外と話さないさあちゃんが、自分から女子に囲まれている桐生くんの元に行こうとしていたこと。
さあちゃんの気配に気づいた女子たちが、『さあ! どうぞ姫! 王子の元へ』と言わんばかりに一斉に道を開けて注目された瞬間、一言も話せなくなって私のほうに戻ってきたの見てたもん。

