桐生くんには敵いません!

「あれか、また桐生になんかされたんか」

 窓際で女子に囲まれている桐生くんをチラリと見てチッと舌打ちをするさあちゃんに首を横に振る。
 なにかされたわけじゃなくて、なにもされてないし、引っ越しのことも聞かされていないからとは言えない。
 きっと、さあちゃんや梶くんも引っ越しの話は知らないだろうから。

「おはよ、望月さん、水谷さん!」

 私が教室に入ってすぐ梶くんもやってきて、隣の席に腰掛ける。

「昨日のこと調べてきたよ」
「でかした、梶! 早いやんけ!」
「昨日のこと?」
「はあ? 福、忘れとんのかい! あれやん。どら焼き王子についての覆面調査や」
「いや、そんな大した調査じゃないからね? 水谷さん」

 そういえば昨日さあちゃんが梶くんに麻木くんについて調べてこいって命令出してたっけ。
というか、どら焼き王子ってネーミングセンスよ。先にそっちに突っ込もうよ梶くん。

「では」とコホンと小さく咳ばらいをした梶くんがメモを取ってきたらしいノートを読み上げる。