「お母さん、ただいま~! 今のお客さんって桐生くんのおばあさん?」
「そうそう、いつもの大福をお買い求めに。それと贈答品を頼まれてね」
「贈答品?」
「ええ……、桐生くん家って、おばあさんと桐生くんの二人暮らしよね」
「うん、そうだったはず」
桐生くんが東京からこの町に転校してきた理由は、大人たちの噂で大体知っている。
桐生くんのおじいちゃんは、ここでは有名な町医者で、小さい頃は私も風邪をひくと桐生診療所がかかりつけだった。
おじいちゃん先生はもう五年前に亡くなって診療所も閉めてしまったけれど、その息子である桐生くんのお父さんもまたお医者さんで東京の大きな大学病院に勤めているらしい。
東京でお父さん、お母さんと一緒に暮らしていた桐生くんに悲劇が訪れたのは一昨年の暮れ。桐生くんが小学校五年生の時、お母さんが病気で亡くなったそうだ。
そこで仕事に忙しいお父さんに代わって、おばあさんが桐生くんを育てることになり転校してきたらしい、と。
「贈答品ね、八月の半ばに頼まれてるのよ。引っ越し業者さんへのお礼にしたいんだって」
「え?」
引っ越しって……。
なんだか胸の奥がざわざわした。

