桐生くんには敵いません!

「福~? 福ってば、どないしたん?」
「え?」

 いつもの校庭でのランチタイム中、気づけばボーッとしていた私は、目の前にヒラヒらしているさあちゃんの白い手で我に返る。

「まさか熱でもあるんちゃうか?」

 さあちゃんが私の頬を触る。

「熱はないな。顔が赤いから風邪でもひいたんかって思うたけど」

 大丈夫とフルフル首を振って見せる。
 ちょっとだけボケっとしてるのは自覚があった。
 それは多分、明日の大事な約束のことを考えていたから。

「福ちゃんは、誰よりも丈夫だから風邪なんかひかないよ。小学校では皆勤賞だったらしいし。おなかも壊したことないはず」

 まるで私の全てを見通しているような言い方の桐生くん。
 いや、私だって風邪はひくし、おなかも壊すってば!
 それなのに私といえば健康を当たり前のように前提とした上で。

「だからこそ何かあったよね? 一体、何があったのかな? 福ちゃん」

 真実を探し出そうとしているのかズイッと距離を詰めてくる刑事のような桐生くんに恐怖を感じて後ずさる。
 桐生くんにだけは知られたくはない、知られてはいけない、怖いからと私の本能がそう言っている。