「うちのどら焼きが好きな人に食べてもらいたいんで。ただし今日のお昼には食べきってくださいね。消費期限ギリギリなのでお店に置けないやつなんです」
「食べる食べる! 次の休み時間に食べようかな」
こんなに目を輝かせてどら焼きを眺めているのを見ていると、望月和菓子店の一人娘としては嬉しいことこの上ない。
「あ、ダメだな。誰かに見られたら分けろって言われるもんな。昼休み、隠れてこっそり食おう」
人懐こい笑顔でニッと笑う彼はその身長の高さもあってか、なんだか大型犬みたいな人だなって思ってしまった。
「俺、一年四組の麻木 悠馬。いつか望月さんと話してみたいなって思ってたから、今日話せて嬉しかった」
私と? 嬉しかった?
あれ? なんだか心臓が、トットットって、スキップしちゃってる。
「俺が望月和菓子店のファンだって伝えておきたくてさ」
「あ、うん、はい」
なんだ、そっか、そういう話か。
何だか勘違いしかけていたので一気に現実に戻された気分で恥ずかしくなってごまかし笑い。
「あ! 明日のこの休み時間、ここに来てくれない?」
「え?」
「望月さんに渡したいものがあるから、約束ね!」
渡したいもの? 首をかしげた私に、じゃあね、と手を振って麻木くんは一年四組に戻っていく。
なんだったんだろう?
四組に入る前、もう一度私を見てニッと笑って手を振る麻木くんを見ていたら、また心臓の音がトットットってなっちゃって。
なんだろう、なんだか変な感じだ。
明日、二時限目終わりにここで、麻木くんに会う。
とても大切な約束事として、自分の中にインプットし大きく深呼吸をした。

