桐生くんには敵いません!


「チッ、飯マズがやってきよった」

 さあちゃんの視線の先には、桐生くんと梶くん。
 小さくクシャミをしながらやってきた桐生くんが当たり前のように私の隣に腰かけて購買で買ってきたパンを頬張る。

「さっき、水谷さん、オレの悪口言ってたでしょ。クシャミ出たんだけど」
「悪口ちゃう。ホンマのことしか言うとらん。飯マズがきたって」
「梶、飯マズだって」
「え? オレのこと?」

 三人の会話に苦笑いしながら今日のデザートを手渡す。

「望月さん家の和菓子、何食べても美味いんだよな。いっただきまーす!」

 賞味期限ギリギリ、お店から下げた菓子はランチのあとの四人分のデザートだ。
 甘いものなら何でも好きなさあちゃんは勿論、桐生くんなんかは時々うちに寄って一緒に暮らすおばあちゃんの分も買って行くほど大好きらしい。
 全く気の合わない二人もこの時だけは、少し笑顔で「美味しい」と頬張ってくれるのは本当にうれしくなる。
 小学校卒業の時に思い描いていた普通の青春とは少し違って、友達はこの三人しかほぼいないけど、これはこれで私の幸せな日常となっているのだ。