なんとか花見が丘を受験し入学を迎えたのだけれど、久しぶりに味わう校舎の雰囲気や周りの人の視線が怖くなって、桜の樹の下で立ちすくんでいたところに私が現れたのだとか。
「最初は福と桐生が付き合うとんのかと思って相当焦ったんやで」
さあちゃんはあの時のことを思い出しては今でもそう言う。
「ウチの可愛い福があんなんと付き合うだなんて、お母ちゃん絶対許さんけどな。まあ、ないやろうけど」
時々親友を通り越してお母さんになってしまうほど、私のことが大好きらしい。
最初は突然の親友宣言に戸惑ったけど、さあちゃんの性格のかわいさに私もいつしか大好きな親友と思えるようになった。
こんな風に素のままのさあちゃんでいられるのは、私と、それと初日にそれを見られちゃった桐生くんと通りすがってしまった梶くんだけ。
今でも人を怖がる癖は直っていないので、他の人の前では弱々しく小さな声でカタコトの標準語を真っ赤な顔でうつむきながら話すさあちゃん。
その姿が純粋で儚げ、見た目同様の心の優しそうな「花見が丘中等部の姫」という肩書を背負うことに。
時々桐生くんに対してケンカを吹っかけてしまうのは、その重圧感に耐えられない八つ当たりのような時もある気がする。
私たちの前では関西弁で気兼ねなく話して大きな口を開けて笑ってるさあちゃんが大好きだし、気を許してもらえてるんだなって安心する。
毎日学校に笑顔で現れるさあちゃんのこと、パグの福ちゃんもどこかで嬉しそうに見守ってくれてるんじゃないかな。

